Trick or Treat ! 3

お菓子をくれないと悪戯しちゃうよ。
















―曽良くんには敵わないなぁ…。

なまえは段幕を羽織ったまま、たった一人で国語研究室へ向かっていた。
先程見た曽良の何もかも知っている、といった目が今でも思い浮かぶ。

―誰にも言ったこと無かったのに、怖い人だな…。まさか、私がわかりやすいのかしら??

なんて自問自答を繰り返すうちに、国語研究室に到着した。
扉を開ける前に段幕のシワを延ばし、深呼吸をしてから扉に手をかける。

「Trick or Treat !」

なまえは勢いよく研究室に入っていった。

「うっひぁあ!?」

しかし、いつもいるはずの机には人影はなく、代わりに奥の資料室からバサバサと本の落ちる音と情けない悲鳴が聞こえてきた。
なまえは慌てて資料室に駆け込むと、沢山の本が散らばっていて、その中心に芭蕉が倒れていた。

「ば、芭蕉先生!?」

近くまで行きたくても本が邪魔して動けない。
芭蕉はなまえの声に顔をあげた。

「あ、は…。なまえちゃん、いらっしゃい。」

照れているのかほんのり赤く染まった頬で困ったように笑う姿がなんとも可愛らしい、なまえもつられて笑ってしまった。





芭蕉は転んだ場所から、なまえは入口から本をまとめていく。
その本の中には芭蕉がなまえに貸した本が含まれている。

「手伝わせちゃってごめんね。」

芭蕉は申し訳なさそうに言う。
本来なら驚かせてしまったなまえが謝るべきなのだ、しかし、先に芭蕉に言われてしまった。

「いえ、私が悪かったんです…ハロウィンだからって調子に乗っていました。ごめんなさい。」

なまえはしょんぼりと肩を落として、自分の行いを悔いた。
芭蕉はぽかんと口を開けてなまえを眺めたが、可笑しそうにクスクス笑い始めた。

「ああ、それで段幕羽織ってるのかぁ。」

なまえは恥ずかしそうに俯いた。

「可愛い魔女だね。」

芭蕉はニコニコと笑う。
その言葉にほんのり赤くなるなまえの頬、なんとなく期待で胸が高鳴った。

「だって、悪戯にきたのにこんなふうにお手伝いしてくれてるんだもん。」

ますます可笑しそうに笑う芭蕉。
逆になまえはがっくりと肩を落とした。期待していた自分が恥ずかしい。

なまえの落ち込みように気がつかない芭蕉は自分がまとめた本を本棚に移した。
なまえも何冊かに分けて棚へ移動した。

「ああ、そうだ。これが終わったら美味しい和菓子があるからそれを食べよう。」

芭蕉はなまえのまとめた本を持ち上げていう。

「へ?」

なまえは隣にいる芭蕉の顔を見上げた。

「可愛い魔女子さんにお菓子をあげないと悪戯、でしょ?ちょうど美味しいのがあるからお茶にしよう。」

皆には内緒だよ、と小首を傾げ芭蕉はにこりと笑った。

「はい!」

芭蕉の笑顔につられるように、なまえもにこりと笑った。

















Happy Halloween !












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Trick or Treat !
2009.10.31

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