酔っ払いの特権

頭がふわふわしてきた。
ああ、これは完璧に酔いがまわっている。
そう自分で実感した頃、私の視界がグラリと揺れた。
それと同時に体を真っすぐに保つことが出来ず、片手を床についてこの酔いを乗り過ごそうと試みる。

「どうしたの?」

頭の上から優しい声が聞こえる。
私はゆっくりと頭をあげて、その声の主へ視線を送った。
ぼんやりと歪んだ視界に映るのは、芭蕉さんだろうか?

「ばしょしゃん?」

「あ、もしかして酔ってる?」

呂律も回らない私を見て芭蕉さん(らしい人物)はクスクスと笑う。

「酔ってない、れす。」

首を横に振って否定してみるが、やはり呂律が回らない。

「ふふふ、説得力ないなぁ。」

「あう、もー、ほっといてくらしゃい。」

私は楽しそうに笑う師匠に杓をしようと思い立って、酒瓶を持ち上げた。

「はい、どぞ。」

「あ、うん、ありがとう。」

注ぎ終わるか終わらないか位になって、再び頭がふわふわと揺れて視界が歪む。
そして私の体が大きく揺れて、手にしていた酒瓶を床に落としてしまった。
幸い瓶は割れず、酒が床に零れる程度で済んだけど、辺りは一気にこちらへ視線を送る。

「大丈夫だった?」

酔いのせいで倒れそうになった私の体を芭蕉さんが受け止めている。
抱きしめられているようにも見えるその体勢に、体が一気に熱くなった。

「あ、あ、あ、のっ!」

「ふふ、お酒臭い…ちょっと飲み過ぎたかな?」

芭蕉さんはそういうと軽々と私の体を抱き抱え立ち上がる。

「今日はこの辺でおいとまさせてもらおうか。」

恥ずかしさと胸のドキドキにより、いっそう熱くなる体。
私は慣れない浮遊感が怖くて芭蕉さんにしがみつく。
すると、芭蕉さんは私の耳元でそっと囁いた。

「酔ったところも可愛いね。」

ほのかに赤く染まる芭蕉さんの耳は酔いによるものなのか、照れによるものなのか私にはわからなかった。



















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酔っ払いの特権/芭蕉
fin
2011.03.06
(2011.03.06〜2011.08.02)

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