繋がることよりも大切な存在

私の体温より少し低い冷たい手が肌着の上から体のラインをなぞる。
私は瞳を固く閉じてその冷たい手だけを感じた。
頬を触るときもいつもよりも優しく包み込むように指を滑らせていく。
肌着の上とはいえこんなふうに芭蕉さんに触れられたことがなかったので緊張する。

「は…、あっ」

私の体は徐々に熱くなっていく、徐々に体に篭っていく熱をどうにかしたくて小さく息を漏らした。
すると胸に触れるか触れないかのところでとまる。

「ばしょさん?」

不安になって瞳を開くと芭蕉さんは優しい目で私を見ていた。

「やっぱり怖いんじゃない?」

「え?」

芭蕉さんに言われて自分の体が震えていることに気付く。

「無理しなくていいよ。」

「違…います」

違うのに涙が溢れる。
私の涙腺から溢れてくるのに自分の意志でとめることができない。

「ね。」

「やだ…ばしょさん。」

離れようとする芭蕉さんを引き止めたくて腕をのばす。
芭蕉さんはその手を取ると芭蕉さんの頬に触れさせてくれた。

「こんなことしなくても私はちゃんとなまえちゃんを愛してるよ。」

「でも…」

止まることを知らない私の涙はもう瞳にものを映してはくれない。

「さ、今日はもう休もう。」

「やだ…やだ。」

「今日は腕枕をしてあげるから。」

こどもをあやすように頭を撫でて額に口づけをしてくれる芭蕉さん。

「おやすみ。」

いつもと同じようにそう囁くといつもより強く抱きしめて芭蕉さんも横たわる。
何となく芭蕉さんの体温がいつもより高いような気がした。

「芭蕉…さん。」

「ん?」

芭蕉さんはもう目を閉じていて、こちらを見ていないけどちゃんと意識を向けてくれる。

「ううん、おやすみなさい。」

「うん。」

芭蕉さんは優しく私の背中を撫でてくれた。
緊張していた体の力が抜けていく。
このとき普段とかわらない夜に淋しさよりも安堵が勝っている自分に気付いた。
自分では気付かなかったが、芭蕉さんは気付いてくれていたんだと思う。
たぶん、男性である芭蕉さんにとってこの中途半端は生殺しに近いものがあるはずなのに、無理にそうしない芭蕉さんの優しさにますます胸がいっぱいになった。


















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繋がることよりも大切な存在/芭蕉
2011.08.07
fin

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