確かな存在 トンと地面に足を着く。 フワフワと不安定な足元を確認するように2・3回コンクリートの地面を蹴ってみたが相変わらず不安定で、閻魔は自虐的に笑った。 いつもの時間、いつもの場所に来たつもりだったが少し早かったようで、閻魔は一人なまえの学校の屋上でゴロリと横になった。 空を眺めると太陽の日差しが閻魔を照らしつけたが、温かさや心地よさは感じない。背中のコンクリートの冷たさも感じない。 ―そういえば、なまえと出会った頃に比べると太陽の位置が少し違うな。 あまりにも太陽の光が眩しいので手を翳すがうっすらと透けてしまい、意味は成さなかった。 「あれ?閻魔??」 扉が開いてそこから愛おしい人間の少女が顔を出す。 今日は早いねぇ。なんて言いながら嬉しそうに小走りで近寄って来たなまえは閻魔の目の前で立ち止まり太陽の光を遮った。 「影…」 自分の手では遮れ無かった太陽の光はなまえの影によってあっさりと消えてしまった。 「へ?」 「いや、なんでもない」 閻魔は首を傾げるなまえの疑問を掻き消すように首を横に降り、柔らかく笑った。 いつもの笑顔に安心したなまえはそのまましゃがむと閻魔の隣に腰掛ける。 再び閻魔に太陽の光が降り注ぎ閻魔は少しだけ目を細めた。 「太陽が出てるとはいえ、そんな恰好で閻魔は寒くないの?」 「うん」 見ているだけで寒そうだと言わんばかりになまえは腕を抱え小さく震えて見せた。 「なまえは最近カーディガン羽織ってるね」 「だってもう寒いもの。もしかして閻魔この恰好は嫌い?」 「ううん」 その恰好も可愛いよ、となまえが好みそうな言葉を付け加えると予想通りなまえは頬を染めて笑う。 「ありがと」 その笑顔が可愛くて二人の距離がじれったく感じた閻魔はなまえに手をのばし、スカートの上からなまえの太腿に触れた。 「冷たい」 スカートは秋の空気にさらされて冷たくなっている。 その感触が不思議で閻魔は近くにあったなまえの手に触れてみた。 「手はもっと冷たいな」 コンクリートの感触も太陽の温かさも感じないのになまえに関わるものは全てなまえを通じて伝わってくる。 「だって今日寒いもの」 なまえは閻魔の手を握り返すと嬉しそうに目を細めた。 「閻魔は暖かいね」 繋いだ手が少しずつ暖かくなって、同じ体温になってしまったようなそんな感覚がしてくすぐったい。 だけど、繋いだ手は離したくなくて指を絡ませるように繋ぎなおすとなまえが生きている証である鼓動が伝わってきた。 「なんでなまえの事はわかるんだろうなぁ…」 「愛…じゃない?」 「…へ?」 予想外の一言に惚け顔で固まっていると、言った張本人が首まで真っ赤に染めている。 「い…いつも閻魔が言うじゃない、愛があるから繋がるって」 「そう、だけど……」 いつもそう言うとめんどくさそうにあしらわれてしまうので、なまえは気に止めていないものと思っていた。 「は、ははっ!」 「ちょっ…何よ!」 繋いだ手を強く引いてなまえを抱きしめると露骨に体を固くする。これは嫌がっているのではなくて照れているのか。 「寒いんだろ?暖めてあげる」 「ばか!変態!調子乗りすぎ!」 「愛だよ、うん。これは愛」 相変わらず足元は不安定だったがなまえが暖かくてその存在を伝えている。 閻魔はより密接できるようになまえを抱きしめて首に顔をうずめる。なまえの香りが閻魔を包み込んだ。 幸せを噛み締めるように閻魔は微笑んだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 咲和樹さんリクエスト 確かな存在/閻魔 fin 2010.10.24 |