帰り道 握りあった掌からお互いの熱が伝わってくる。 付き合い始めてもう半年以上経ち毎日のようにこうして手を繋いで帰っているというのに未だにこの熱に慣れず胸が煩いくらいに鳴り響く。 「日が落ちるのがはやくなりましたね。」 繋いだ手はそのままに隣で歩く曽良は日が暮れるのを惜しむように空を眺めていた。 更衣をしてワイシャツだった曽良の体に黒い制服が加わりかっこよさが引き立てられている。 その姿が美しくてなまえは言葉を忘れ、絵画のような横顔に見取れしまった。 「なまえ?」 「あ…えぇ、本当に…」 不思議そうに曽良に顔を覗き込まれ、なまえの顔は火が出るのではないかというくらい赤く染まる。 それが恥ずかしくてなまえは俯いた。 「なまえ」 普段感情を表にださない曽良だったが、なまえの可愛らしい行動ひとつひとつに心を揺り動かされ、名を呼ぶ声が甘く優しものとなっている。 「なまえ顔をあげてください」 「あの、でも今顔が真っ赤ですから…」 上げられません、と必死に首を横に降るなまえ。 曽良は困ったように、しかし少し楽しそうに小さくため息をついて辺りを見回した。 そこにあるのは夕日に染められた美しい景色があって、曽良は思い付いたように言葉を紡いだ。 「大丈夫ですよ、僕も真っ赤ですから」 「え?」 なまえが驚いて顔をあげるとそこには夕日によって染められた曽良の顔。 「まぁ、なまえほどではありませんが」 ようやく見られた愛しい人の顔を繋いでいない手で優しく包み込むと、なまえは困ったように眉を下げた。 「ず…狡い、です」 「そんなこと言わないでください、今日はあと少ししかなまえと一緒にいられないのですから」 曽良に言われ気付く。 ここは二人の帰路が変わる場所。 なまえの胸の奥がズシリと重くなった。 「明日も明後日も…貴女と一緒にこうして歩けるとわかっていても、この手を離しがたい」 強く握られた手は少し痛かったがそれ以上に愛おしさを感じた。 「僕はなまえと離れたくない」 真っ直ぐに見つめられ、なまえの心臓は痛いほど鳴り響く。 「わ、私も…この手を離したくありません。」 控え目にだがなまえも曽良の手を握り返すと曽良の口角が上がる。 「では、今日はなまえを家まで送ってもいいですか?」 「え、でも…」 遠回りになってしまう、と言おうと口を開くが無理矢理手を引かれてしまった。 「僕と離れたくないと言ったのはなまえじゃないですか。ほら行きますよ。」 「あ…ありがとうございます」 曽良は振り向かなかったが、唯一見える耳が夕日に照らされるより少し赤く染まっていた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 雲雀さんリクエスト 帰り道/曽良(学パロ) fin 2010.10.15 |