伝わる気持ち

教師と生徒とか、年齢。

そんな立場みたいな制限が無ければ貴方は私を愛してくれますか?







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私のクラスにはミス日和がいる。
あ、ミス日和って言うのは、文化祭で行われる美人コンテストで優勝した女子生徒を指す。
今年の美人コンテストは荒れるに荒れて創立以来初の1年生が…しかも転校生の優勝という波乱劇があった。

性格良好、成績優秀、運動も出来る。
容姿は美人系、しかし人懐っこい笑顔は少し幼くて可愛らしい。
スタイルは良いが、身長は人並み。
生徒会をやっているので友達は同級生から上級生まで、しかも先生達の評判も良い。
本人はそんなことも鼻にかけるでもなく、ミス日和になる以前と変わらない生活を送り、それがまたなまえちゃんの人気なんだと私は思う。

「芭蕉先生。」

なまえちゃんは生徒会の仕事をサボって私の研究室に遊びに来る。
私がなまえちゃんの担任であるのと、なまえちゃんが本が好きであるとが重なり自然とそうなった。

「ああ。いらっしゃい、今日の仕事はもういいの?」

私は明日配るプリントを纏めている途中であったが、顔を上げてなまえちゃんを迎え入れた。

「終わってないんですけど、太子先輩と閻魔先輩が遊んじゃってそれどころじゃないんです。」

なまえちゃんは困ったように眉を下げながら笑う。

「まぁ、そのお陰でここに来れたんですけど」

そういうと、鞄の中から一昨日貸したばかりの本を取り出し私がいる机に置いた。

「わぁ、もう読み終わったの?」

「はい!とっても面白かったです。それに古典の勉強にもなりました。」

ニコニコと私に向けられる笑顔から、貸した本を心から楽しんでくれた事が伝わり私も自然と頬が緩んだ。

「それはよかった。」

他愛ない会話。
笑い合う私たち。

私の心にはなんとなくむず痒い気持ちが生まれている。
それはきっとなまえちゃんから向けられる好意の気持ちのせいで。
はっきりと言われたわけではないが、なまえちゃんの言葉や行為にはそれとなくなまえちゃんの気持ちが見え隠れする。

自意識過剰といわれたら、そこまでなんだけれど。

「次に貸そうと思ってる本を今日は持ってきてないんだよね、明日でもいいかな?」

元々、本を読むのが早いなまえちゃん。そこにもってきて古語の読解力が上がっていたんだろう。私ですら驚くほどのスピードで本を読んでくる。

「いつでも大丈夫です。芭蕉先生が貸してくれるなら。」

ああ、ほらまた。
頬がほんのり赤いなまえちゃんの笑顔。
私に向けられた言葉。

そんななまえちゃんを見て心の奥底から込み上げる感情。
生徒として大切だと思う気持ちと、男としてなまえちゃんを女性として見てしまいたくなる本能。

「…っ。」

こんなときは決まって私は何も言えなくなってしまう。
ただ、苦し紛れに微笑むだけ。
もっと気の利いた言葉があればいいのにと思う。

「では、そろそろ戻りますね。」

何か手伝うことがあったら呼んでください。
そういい残して、なまえちゃんは研究室を出て行った。

急に研究室が広くなったような気がする。

もしも、去っていくなまえちゃんの後ろ姿を捕まえたなら私たちの関係は変わるだろうか。

目を閉じてそんな衝動を押し殺し、目の前に置いてある本の表紙を優しくなぞった。









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芭蕉/伝わる気持ち
fin
2009.10.23

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