Hello my lover つい先日まで私と妹子は唯の幼なじみという名の関係だった。 それが妹子からの告白によってその長々と続いた腐れ縁みたいな関係が終わり、私たちは恋人となった。 いつから妹子が私を好きになったのか知らないし、いつから私が妹子を好きになったのかわからない。 でもこうなることが当たり前だと私たちは考えていたのかもしれない。 だけど、その腐れ縁を越えた関係になって少しだけよそよそしさやぎこちなさを感じてしまう。 「………。」 「あ。」 さりげなく繋がれた手。 どこかたどたどしく、そのたどたどしさが私を緊張させた。 もしかしたら妹子もそうなのかもしれない。 だって妹子の掌はひんやりとつめたかったから。 「妹子、緊張してるの?」 場違いな台詞だったけどどうしても聞きたくて小さな声で尋ねることにした。 「そういう野暮こと聞くなよ…。」 耳まで真っ赤に染めた妹子が困ったように笑う。 その笑顔に不覚にもときめいてしまった私は繋いでいた手をさらに強く握った。 「ん、ごめん。でもさ…」 「何?」 「私は妹子が緊張してくれて嬉しいよ。」 「…はいはい。」 呆れたような照れているような、そんな妹子の表情にいつもの…幼なじみだった頃の妹子を見たような気がする。 「ねぇ、妹子はずっと私のことが好きだったんでしょ?」 「はあ?…なんで?」 「なんとなく。」 「どうだかね。」 そう言う妹子がそっぽむいてしまったから、そうなんだってわかった。 相変わらず嘘が付けない奴。 「そっかー。」 「なっ、何勝手に解釈してるんだよ。」 「ちょっ…やめっ……!」 大慌てで私のほっぺを抓ってきた妹子の指に力はなく、私たちは子どものようにじゃれて笑い合った。 たぶん私たちはお互いにどう一線を越えていいのかを知らないだけなんだ。 「ね、妹子。」 「ん?」 無防備な顔した妹子が私の視線を捕らえ笑う。 「大好きだよ。」 妹子の笑顔を見て私の全身に伝わる緊張感と胸のときめき。この気持ち妹子に伝わるといいな。 「…僕も。」 強く握られた掌はお互いの体温で温められて熱いくらい。 たぶん、二人とも同じ感情を胸に抱いてる。 照れる妹子の表情も繋いだ手から伝わる体温も…今日という日を私はずっと忘れない。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Hello my lover/妹子 fin 2010.09.13 |