答えは未来に 「これはなぁに?」 なまえが指差した先にあるのは一輪の花。 太子はそうするのが当たり前のように、なまえが指差した先を見つめ口を開いた。 「あれは、菖蒲だ。夏に咲く花。」 そういうと太子は立ち上がると、その花を摘み取りなまえに手渡した。 「ここから見える景色は四季折々違うからな、最高だろう?」 「うん。花や木が季節よってかわるし…とても綺麗。」 受け取った花と太子を交互に見つめ、なまえはにっこり笑った。 「でも、やっぱり一番綺麗なのは太子と一緒に見る景色…かな。」 「なっ…そんな言葉、ど、どこで覚えたんだ!」 予想外の一言に太子は驚愕を隠しきれず帽子の先っちょを伸ばしたり短くしたりせわしなく動いた。 「馬子様が、今度言ってごらんって。」 コロコロと笑うなまえに太子は頬を真っ赤に染める。 「ねぇ、この言葉ってどういう意味?」 再び向けられた興味の目に太子はそわそわしたままなまえの頭をくしゃりと撫でた。 「余計な事は覚えなくてもいいから。」 「ふーん…。」 「もう少し大人になればわかるようになるで、おま。」 今はまだ知らなくていい、と太子は言うとなまえが手に持っていた花をなまえの髪にそっと飾った。 「ありがとう。あ、あれ。あの虫はなぁに?」 「ん?ああ、あの虫はな…」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 答えは未来に/太子 fin 2010.08.05 |