告白は突然に

日も傾き少しだけ涼しさを感じることが出来るようになった夕暮れ。
芭蕉は弟子を連れて歩いていた。

「あー!見て下さい向日葵ですよ、しかもいっぱい咲いてる!」

弟子の一人なまえはそう言うと嬉しそうにはしゃぎながら道から少し外れたところにある向日葵の咲く道へ行ってしまった。
末弟子のなまえは元気で明るい子だが、まだ子どもっぽさが抜けない。

「芭蕉さーん、曽良兄さーん。」

向日葵の隙間からひょっこりと顔をだし芭蕉と曽良を呼ぶ姿は幼い頃と変わらない。

「ったく。」

それを見てもう一人の弟子曽良は小さくため息をついてなまえのいるところへ足早に歩いた。

「ほら、寄り道してると迷子になりますよ。」

「えー。」

ぶつくさと文句を言うなまえの腕を引きながら曽良はもとの道へ戻った。
それを見ていた芭蕉は可笑しくて笑ってしまった。

「何笑っているんですか、気持ち悪い。」

「気持ち悪いって酷いな!いや、なんだか二人はお似合いだと思ってね。」

曽良の暴言へのツッコミも程々に、芭蕉はクスクスと笑った。
芭蕉の言葉がよく理解できないなまえは首を傾げて言う。

「私と曽良兄さんがお似合いって、どういうことですか?」

「ん?ほら、今みたいにさ…まるで本当の兄妹みたいじゃない。」

昔から変わらないから余計にね、と昔を懐かしむように芭蕉は言葉を紡ぐ。

「あはは、兄妹ですって!兄さん。」

「兄妹、ですか。」

嬉しそうに笑うなまえとは反対に不満そうな顔をする曽良。

「こんな妹はごめんですね。」

「うっそ!?何で?どのへんが嫌!?」

余程ショックなのか歩く足を止めて、なまえは腕を掴む曽良の手をもう片方で強く握り質問攻めをする。
なまえが足を止めたことで曽良の足も自然と止まった。
曽良は一瞬めんどくさそうな表情をしたが、言葉を選びながらゆっくりと語りだした。

「どこが嫌…というわけではなくなまえを妹にするのが嫌なんです。」

「なんで?」

「僕は貴女を妻にしたいからです。」

「ほー、なるほど。」

曽良の告白を軽く受け止めなまえはいつもとかわらぬ笑顔で笑う。

「きちんと理解できました?」

「勿論!つまり、私が曽良兄さんのお嫁さんになるってことでしょ。」

それを聞いて曽良もいつも通りの表情でなまえの笑顔を受け止めて、再びなまえの腕を引き歩き出す。

「あ……えっ!!?」

ただ、二人のやり取りを見ていた芭蕉だけがその場で立ち尽くしてしまったとか。




















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告白は突然に/曽良
fin
2010.06.30

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