資料探し

「失礼します。」

聞き慣れた明るい声が私の研究室に響いた。
私は纏めていた書類を片付けて顔をあげると、そこには予想通りの生徒。
最近俳句の弟子になったなまえちゃん。
と、予想外の生徒。

「失礼しています、芭蕉さん。」

しれっとした顔して立っているのは私のクラスの教え子で俳句の弟子でもある。
学校内で二人が一緒にいるのも珍しいな。

「曽良君、研究室に入るときはなまえちゃんみたいに一言言わないと!」

「なまえさん、さっさと資料探して教室に戻りましょう。」

私が教師らしく注意してやってるのに反省の色どころか私を無視をする曽良君。

「曽良君無視!?」

「芭蕉さん、煩いです。」

「…松尾バションボリ。」

せっかくなまえちゃんがいるから、かっこいいところ見せたかったのにな。
曽良君の後ろ姿を呪わんばかりに睨んでいると、なまえちゃんが私の隣にやって来た。

「あのー、芭蕉先生。」

「え?あ、どうしたの?」

「実は奥の細道の資料をお借りしたいのですけど。」

控えめな笑顔と優しい声に私の傷ついた心は一瞬にして癒されたような気がする。

「さっさと出してください。」

曽良君もなまえちゃんと同じように資料を借りに来たみたい。
珍しい組み合わせだと思ったらそういう理由だったのか。

「細道の資料か…よし。」

私はここでいいことを思い付いたぞ。

「曽良君、君が資料室に行って取って来て。」

「何で僕がそんな事をしないといけないんですか。」

私の一言に曽良君の目が鋭く光った。
少し距離を置かないと断罪されちゃいそうな気がする。

「わ、私は次の授業の資料を纏めないといけないし。」

ジリジリと攻め寄る曽良君から少しずつ逃げる私になまえちゃんは口を開いた。

「あ、河合君。私も手伝いますよ。」

ああ、なまえちゃん君は本当に心優しい子なんだね。

「なまえちゃんは女の子だからそんな重いの持たなくていいの。そのかわり私の手伝いしてくれる?」

それに、なまえちゃんが曽良君と一緒に資料室行っちゃったら意味がない。
これは曽良君への断罪なんだから。

「え?あ、はい。」

「チッ、変態ジジイが。わかりましたよ、探してきます。」

「あ、河合君ありがとう。」

なまえちゃんの言葉を受けて静かに資料室に姿を消していく曽良君。
よし、曽良君に勝ったぞ!

「さ、なまえちゃん。お茶でもいただこうか。」

気分もいいし、なまえちゃんとお喋りでもしたいな。

「えっ!?次の授業の準備は?」

「まあ、いいから。」

曽良君が戻ってくるまでの間、困惑するなまえちゃんと一緒に少しだけお茶を楽しんだ。

「何をくつろいでいるのですか。」

そう聞こえたと思ったら頭の上から大量の本が降ってきた。

「ぎゃ!?」

「なまえさん戻りましょう。」

大量の資料を持って出て来た曽良君はいらない資料を私にぶちまけたのだろう。

「え、芭蕉先生は…」

「ほっといて僕の手伝いをして下さい。」

「はあ…。あの、お茶と資料ありがとうございました。」

なまえちゃんはペコリと頭を下げて曽良君と研究室から出ていった。




















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梅干様リクエスト
資料探し/芭蕉vs曽良
fin
2010.06.19

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