小説 | ナノ








アンタ達付き合ってんの、と言われれば最初こそ笑ってまさか、なんて言っていたが今では……なんて、恥ずかし過ぎて友だちに言えない。

私とエースはものすごく仲良しだ、でもさ仲良いと逆に踏み出せない一歩があると思うんだよね。

「ね、ねぇ…夏祭り行かない?最終日らしいんだよね、今日」
「あ?今日?混んでるだろ、明日俺部活あるし」
「ですよね〜……」

こんな感じだ。
まさに、こんな感じ。

女の子らしく髪をわちゃわちゃといじってみたら、どうしたと本気で心配されたりとかとかとか。
そんな事を繰り返していたら、悩みでもあんのか?俺で良かったら相談に乗るぞと二人きりになった時にそう言われる始末。
心配されるのは嬉しいと思う反面、泣きそうになる。

あ、もうこりゃダメなんだな。

恋愛対象外という枠組みにいる自分のポジションを再確認してから四ヶ月。
後退もしていなければ、友だちから前進しているわけでもない、そんな距離感。

「それよりやべーよ、俺次の数学当たったら死ぬ」
「どうせ答えるのは隣の席にいる私でしょ、ったく」
「いつもわりぃな」

ニッカリ笑った顔なんて見せられたら何にも言えないじゃない……。
ずるいよな、とエースを横目にため息をついた。


そんな調子で一日が終わり、私は図書委員の集まりへ、エースは部活へ。
待ち合わせは六時に図書室、集会が終わったら私はエースを待つ為に図書館で勉強。
これのおかげで成績は少し上がった。

「成績が上がったって……」

ノートの端にエースと書いて、そして…消した。
どんなに想ったって報われないのなら、こうやって待っていて一緒に帰って友だちのフリを延々とする、なんて…

「つらいなぁ」
「何がだ」
「何がってそりゃ………え、あれ?トラファルガー君?」

いつの間にかに私の後ろに立っていたトラファルガー君、何だこいついつの間に、とか色々考えていたら何事もないような顔をして私の隣の席に座った。

「現文と古文得意だろ、教えろ」
「人に頼む態度じゃなくね?それに、先生に聞いた方が良いよ。先生と仲良くなれるチャンスだし、努力してるなぁって思ってもらえるし、それに分かりやすいし」
「あんなジジイに教わったってわかんねぇ」
「…………てか私トラファルガー君みたいな人教えられる自信ないよ、私より頭良いじゃん」
「現文と古文のみはお前のが出来るだろ」

のみって……まぁそうだけど、なんか他に言い方あるだろ。
全くもって不本意だけど、エースが来るまでまだ時間があるからここに居なくちゃだし……仕方ない、か。


「じゃあ、わからないとこ教えて」















「全然出来るじゃん、何これ私が逆に教えて頂きたいんですけど。数学とか物理とか」
「別に良いが、もう下校時間だろ」
「え、あっ本当だ!六時過ぎちゃってるね……」

エース、遅いな。六時ちょっと前位にいつも来てくれるのに……
待ってようか。
でも図書室も出ないといけないし、部活の方に行ってみたら良いかな…

「ポートガス屋か」
「へ!?な、何が!?」
「待ってるんだろ、いつも。それくらい知ってる」


つらいよな、とニヤリと笑って私を見るトラファルガー君。
やべぇ、バレてる。

「別に、トラファルガー君に関係ないでしょ。ほら、図書室出よ。下校時間過ぎてるし」

なんだか恥ずかしくなって、机に広げていたノートや教科書を無造作にカバンに入れていく。
やだやだやだ、この人だから苦手なんだよ。何でもわかりますみたいな顔してるし、何でも解けちゃうし。
あーやだ、天才って本当にいや。

なんて考えていたら、腕をパシッと捕まれた。

「俺じゃダメか?」

……………なんてこんなに近くにいるのに、大きな声で言ってきて…
な、何を言ってらっしゃるのこの人と思っていたらトラファルガー君の顔が耳元まで…………

「冗談だバカ、感謝しろよ」

と小さく呟いたかと思ったら、図書室のドアをあごで示してさっさと行けと。
な、何なのコイツ。

逃げるようにして立ち去って、少し重たいドアを力いっぱい開ければいてっと叫ばれた。

「ごめんなさいって、何だエースか。ごめんごめん」
「何だってなんだよ、あ〜……」
「え、ごめんマジで痛かった?」

未だに立ち上がらないエースに手をさしのべれば、その私の手をじーっと見つめるエース。
コイツ何してんの?

「エース?」
「あ、いや…何でもねぇ」

むっくりと立ち上がって、またじーっと見つめられた。

「ねぇ、ごめんてば」
「いや、そうじゃなくて…」
「じゃあ、どうなの?」
「……………何でもねぇ」

そう言って歩き出してしまうエース、なんなんだコイツは全くもって理解不能だ。
それでも私の歩幅に合わせてくれる、なんてことに少しだけ嬉しかった。

「今日、結局祭行ける人見つけたのか?」
「え?いや、ナミはバイトって言ってたしビビは遅くまで出られないだろうし、来年かななんて」
「そうか」

話を聞いてたのか聞いていないのかよくわからない調子で受け答えするエース。

「トラファルガーとか、行かねぇのか?」
「トラファルガー君?そんな仲良くもないし」
「……さっき一緒にいただろ?」
「あぁ、なんか現文古文教えろって。まぁ奴のが全然出来たんだけどね」
「へぇ…」

部活後で疲れているのか、さっきから言葉に力がない。でも、部活ごときで疲れてしまうような奴じゃないからそんな訳でもないんだけど…
何かあったのかな、でもこんな風になってんのに何かあった?なんて軽々しく聞けない…元気だけが取り柄のコイツがこんなんなんだもん……

「あ、じゃあな」
「え?あ、本当だ。じゃあね」

そして、いつの間にか私の家の前まで来てしまっていたり。
結局何も聞き出せないままに、別れることになってしまった。
ダメだなぁ、私。

「じゃ、バイバイ」

でも、ここまできて何か言える勇気は全くない。
逃げるようにして家に入って、深呼吸する。
自室に向かって、制服を脱ごうとリボンに手をかけると外から大声で私の名前を呼ぶエースの声が聞こえた。
窓から外を覗いてみれば、エースが未だに家の前にいて……自然と手が動いて………


少女は星夜のドアを開けて


「さっさと着替えて出てこいよ、祭やっぱり行こうぜ」

思えばこれが始まりだったのかも、なんて。

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長くなった上によくわからない作品になった気がします^^;

参加させて頂いてありがとうございました







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