小説 | ナノ
妙に揺れる身体、うるさい位に音がする。
懐かしい音、これは……
「……汽笛?」
返事をするかのように、汽笛が大きく鳴った。耳が痛いほど。
「……どうして。」
身を乗り出して窓の外を見ると、次につく駅はウォーターセブンのようだった。
待って欲しい、何が起こっているのか全然理解出来ない。
昨日、私たちは七夕パーティーをやって。酒にそんなに強くない私は、早々に寝てしまってそれで起きたら海列車の中。
まず、皆が見当たらない。
何故か、私の頭には髪飾りがつけられていて、その上におしゃれな帽子もかぶってる。
そして昨日の夜はジーパンを履いていたのにも関わらず、ゆったりとしたワンピースを着ている。
………あ、これ随分前にカリファが買ってた服だ。カリファにしては、やけに長い丈のワンピースだなって思ってて…っていう事はカリファが着せたってこと?
かわいらしいポーチには、新しい可愛いハンカチと私の財布。しかも分厚くなってる。
あとは、私の書いた短冊。
『ずっと皆で仲良く暮らせますように』と書いた所が、大きくバツを書かれている。
「なんで………あ。」
裏返すと、綺麗な字で『ちび子へ』と言葉が始まっていた。
『短冊にくらい、本当のお願いを書きなさい。ずっと大好きよ。』
名前は書いてなかったけど、誰が書いたか位わかる。
誰が何を思って私を送り出したかもわかる。
皆が私の為に随分と前から準備を始めていた事がわかる。
涙が出てくる位嬉しかった、だけど…
「今更…」
どんな顔をして会えば良いって言うんだろう。
下手したら殺される……いや、間違いなく殺される。
政府の正義に従った私たちは、政府によって狙われているんだから。
私が戸惑いを感じることなんて構いもせずに、海列車は走る。走って走って、そしてウォーターセブンが見えてきた。
…どうしようか、いっそ海賊にでもなってワンピースを目指してみようか。
別に、私はCP9の皆が好きで働いていただけで海賊が嫌いとか正義を貫くとかどうでもいいし。
「…会えないよ。ごめんね、皆。」
会う勇気もないけど、まず会えるわけがない。
私だったら、もう忘れてしまいたい。自分の敬愛する人を殺そうとして、自分を裏切った恋人なんて。
汽笛がもう一度、長く響いた。
ウォーターセブンについた。とにかく、どこか海賊の船にでも乗り込んで頼んでみよう。
とにかく、海賊船がいるところ……
私は列車を出て、顔を隠すように帽子をかぶってうつむきながら歩いた。
地面を見て歩いても、何かにぶつかることがない位歩きなれた場所。
涙が出そうになった。
…そういえば、今日だ。誕生日。
「本当に、来たな。」
帽子が取られる。
声が聞こえる。
知ってる人、恋しかった人。
あ、ダメだ。
「ちび子…」
ダメだ、ダメだ…逃げなきゃ、逃げなきゃ。
そう思っても、足が動かない。
「………ちび子」
…あぁ、もうこのまま殺してくれないだろうか。早く、殺してくれないだろうか。
最期に貴方を一目見られたら満足だから、それだけで幸せだから。どんな顔をしていたとしても。
ゆっくりと顔を上げる。
「探したんだぞバカ野郎。」
感じたのは縄で縛りあげる痛みではなくて、力強い腕の中の温かさだった。
「…な、んで」
「昨日、誰かからちび子が今日ここに現れるって手紙がきたんだ。」
「そうじゃなくて…」
なんで、抱きしめてくれているの?
振りほどこうとしても、ダメな位…何故私を抱きしめてくれているの?
なんで…
「ちび子に、ずっと会いたかった。」
どくん、と胸が熱くなる。
「許せない気持ちも確かにあったけどな、やっぱり会いたかった。ちび子だから。」
「ごめんなさい…」
「お前も苦しかったんだろ、ごめんな…気づいてやれなくて。」
様子がおかしいのは、わかってたんだ。と、腕の力を強くさせてパウリーが言った。
涙は、もう止まらなかった。
「本当にごめんなさい、ごめんなさい…」
「なぁ、ちび子。今日、何の日かわかるだろ。」
ミルキーウェイをわたって
泣いてないで、笑ってくれよ…なんて優しく声をかけてくれる貴方が愛し過ぎて泣きたくなった。
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誕生日なのになんでこんなに暗いの笑
ハッピーエンド至上主義な私だけど、こんなにうまいこと行くのかなぁとも考えたり。
また違うパターンで書いてみたいな^^*
とにかく誕生日おめでとうっ
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