小説 | ナノ
街の中心にある大きな大きな笹に、それに見合う程たくさんの短冊と飾りが釣り下げられている。
「欲望の塊じゃな。」
「そういう事言わないの。ほら、皆が待ってるんだから早く帰ろう。」
買い物袋を両手に何個も持っている私たち、この街には七夕の日にものすごく大きな祭があるのだ。
ちなみに、今日がその日。
私たちはそれに便乗。
お酒も食べ物もたくさん買って今からちょっとしたパーティーをやるつもりだ。
「珍しく晴れたのう、この日に。それにしても、一年に一回しか会えんのはかわいそうじゃな。」
「………一年に一回でも、逢えればいいんじゃないかな。」
「……ちび子」
「何?…あぁ、ごめん。気にしないで。」
「いや……悪かった。」
カクが帽子を深くかぶる。
私は空を仰ぎみる。
笹越しに見える綺麗な星空が憎たらしい。
「雨降っちゃえ、バーカバーカ…」
カクに聞こえないように、小さく小さく呟いた。
去年の今頃は、マンションで二人っきりで酒を飲みながらわいわいやっているところだった。
最初の二回はカリファやルッチやカクも一緒で、後の三回は私と彼の二人っきり。
三年間、男女の付き合いをした。ただの男とただの女の付き合い。
今年は違う、二人が九人に増えて……一人減った。明日は織姫も彦星もさし置いて主役になる大事な人が今年はいない。
「パウリー…」
たくさん言いたいことがある、真実を自分の口から話したかった。
あの破廉恥ばっか言ってるパウリーに告白されるとは思わなかった、ずっと五年経てばサラッと別れられると思った。
全然違った。
船を見て、工事現場を見て、海を見て、空を見て…いつも思い出してしまう位、まだパウリーが好き。大好き。
家についてカリファがいつのまにか作ってくれたごちそうを食べながら、酒をぐぃっと飲む。
じわじわと胃が熱くなった。それに、なんだか気持ち悪くて変な感じ。
ベランダに出てみると、夜風が珍しくひんやりとしていて気持ちよかった。
空はすごくきれい、天の川がよく見える。
ミルキーウェイを見上げて
やっぱり思い出すの貴方だけ。
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明日はパウリーのたっんじょっうびっ
明日っはハードなっテッストっがあっるよ!
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