小説 | ナノ
アイツのことを一番よくわかっているのは俺だ、なんて自惚れていた。
記憶がない位小さい頃から、ずっと一緒にいた。
アイツも俺を慕っていたし、何より俺がいるからという理由だけで俺と同じように船大工になった。
だから、俺は大きく勘違いしていたのかもしれない。
「なぁんで、こうなっちゃったかな……」
さっきから時折泣きながら、水を飲むようにして酒をくらうちび子。
「初めて付き合ったのにさ。浮気されてバイバイとかホント洒落になんない。」
そう言って突っ伏して、また鼻をすする。
かれこれ二時間は飲んでいる、そろそろ止めないと…いや、もう止めないと身体に障ると思う。
俺だったら、お前をこんな嫌な気持ちにしなかったのに。
………なんて、頭をよぎる。
「もうやめろよ、飲んでも男は帰ってこねぇぞ。」
「パウリー辛辣…何でそういう事言うかな。」
好きな女が違う男の事で泣いてるなんて、腹立たしい事この上ないからだ。
「あーあ、また恋愛したい。」
ぶっちゃけ、なんとなく付き合ってただけなんだけどね、なんてへらへら笑い出すちび子。
何とも言えなくて黙り込めば勝手に勘違いしたらしく、強がりじゃないよ?なんて言ってくる。
「だって本当に好きな人は私のこと、全然見てくれないんだもん。」
「はぁ!?」
強い酒が気管に入って苦しい、ごほごほと咳をする俺の背中をゆっくりとさする。
そして、俺の顔をじっと覗きこんだ。ちび子の瞳の中に、俺が存在している。
「試しに違う人と付き合ってみたら、距離は置いても何も言ってくれないわけ。」
ジーッと俺を見つめる強い眼差し、目を背けることが出来ない。
「ねぇ、もうそろそろ進もうよ。後ろでも前でもいいからさ。この距離って意外と疲れんのよ。」
はっきりさせて、進もう。
そう言って、ちび子の瞳が閉じられた。
Pの喜劇
ゆっくりと席を立ち、早々と店を出ていくちび子。
残された俺は、ぼうっとちび子のいた席を見つめる。アルコールの匂いが強いくせに、残った感覚は柔らかな温かさだけだった。
そして、気が付けば走り出していた。
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キリリクありがとうございました、燗那さま^^*
これって…切甘、ですかね?←
しかもせっかく同じ職場で働いているという素敵設定案を頂いたのに有効活用できなくてごめんなさいっ
書き直して欲しいーとの事であれば、全然書かせて頂きますので^^;
ではでは、リクエストありがとうございました^^*
(9000)
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