小説 | ナノ
テレビ番組の話、芸能人の話、先生が変な事を言っていただとか宿題忘れたから見せてだとか……。
恋人みたいな好きだとか、愛してるだとかの言葉は一切なかった……でも、ないのが普通だと感じていた。
私は彼が好きだけど、友だちとしての会話が心地良かったし何より楽しかった。傍に居られたら、それで良かった。本当に、それだけ。
「お前の友だち、ほらあの子。今ラケット持って走ってる子、可愛いよなー。」
「あぁ、アンタ同じクラスなんだから名前位覚えなよね。可愛いよ〜、それにスッゴい良い子。」
「だろうな、顔に出てるよ。誰かさんと違って。」
「おいこらどういう意味だ。」
だから気付かなかったんだ、日常会話に放り込まれたこの話題に。
全く気付かなくて、ずっとアイツを見つめてて。
「ちび子ちゃん、協力してくれよ!イチゴ牛乳奢るからよ!」
ぜーんぜん気付かなくて…
「え、何いきなり。どうしたの?」
確かに私、鈍いって言われるし成績も半分よりいつも下。
「俺、実はあの子が好きなんだ…」
でも、ここまでバカだとは思わなかった。
そうなんだ、私あんまり仲良くないよ?あの子と…なんて言った私に手を合わせて頭を深く深くさげる。
「それでも良いんだよ!俺、高校になって初めて良いなって思ったんだ。なぁ、マジで頼むよちび子。お前しか頼れる奴いねぇんだって。」
うん、じゃあわかった。なんて返事して、嬉しそうに笑うアイツの顔を見て頭がぼうっとした。
帰り道、いつもみたいに二人で帰って最後の別れ道で別れて歩きながら考える。
サッチはあの子のことが好きなんだ、そうだよねアイツ面食いだもんね。
じゃあ、私は……
「終わっちゃった……」
全部全部、終わっちゃった。
自覚した頃には涙が止まらなくて、思わずうずくまった。誰かに変な目で見られたって構わなかった、もうなんか頭の中がぼうっとしてぐるぐるして気持ち悪くてすぐに歩けそうになかった。
吐き気がした。
その後、偶然通りかかったエースに声をかけられて支えられながら家まで送ってもらった。
エースは察したように何も言わなかった、この鈍ちんエースさえ気づくのに何であのくそリーゼントは何もわからないんだろう。
次の日からサッチと私の二人にエースが加わった。
もしかしたら、私の事を好きになってくれないかな…とかくだらない事を考えてずっとサッチと一緒にいた。
クッキーを焼いてきたら、女の子らしいの気持ち悪いって言われた。でも、エースも一緒においしいって言ってくれたから許そうと思う。
その頃、段々あの子とサッチの距離感が近くなっていった。
「あの子、今日誕生日らしいんだ。……俺、今日言うわ。」
綺麗に包装されたプレゼントをぎゅっと握りながら、サッチが言った。
「リボン位つけたら?」
ポーチから可愛らしいピンクのを取り出して、少し汚くなったプレゼントにかわいく結びつけた。
だってさ、ほら。最後まで気の利くイイ女って思われたいじゃない?
「ありがとう、マジでありがとうなちび子!俺行ってくるわ、イチゴ牛乳待ってろよ!」
「ケーキも付けろよバーカ。」
「あぁ!じゃあな!」
嬉しそうな顔で笑うアイツに、頑張って言ったおっきな嘘。
「頑張って。」
ごめんね、本当はフラレてこいくそリーゼントとか思ってる。
あたしにしては頑張った
涙が止まらない、全然止まらない。
嘘ついて嘘ついて嘘ついて、そんで傷ついて終わったあまずっぱくも何ともない、ただの想い出。
******
ごめんなさい。企画サイト様に提出。
テーマは嘘、です。
すっごくしんみりしたものが書きたくなって参加させて頂きました。(ベタだねっ!)
途中までエースにするかサッチにするかすごく悩みました。
でもサッチに手を出してみたくてサッチ君にしてみました^^*
でもサッチ君になってるかは疑問!←
続編とかやってみたい、ハッピーエンドが好きなんだ^^*
素敵企画サイト様に参加させて頂いてありがとうございました!
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