小説 | ナノ
先に言っておくけど、自慢じゃないわよ?
コビーやヘルメットだかヘルメッポだかと同期の私は三人の中ではもちろん、男達なんかよりもずっと…一番強かったの。
センゴクさんにも戦略や行動の落ち着き、冷静さはほめられたし、ガープさんも私をすっごくかわいがってくれたわ。
高嶺の花みたいに扱われていた私だったけど、コビーはいつも優しく接してくれたの。
重い荷物を持ってくれたりだとか、書類処理が溜まっちゃって(主にガープさんの)ずっと徹夜してた時なんてコーヒーを入れて、それに書類も手伝ってくれたし。
誤解しないで欲しいけど、私、彼が便利だとか扱いやすいとかって思ってるわけじゃないわよ?
失敗した時慰めてくれたり(失敗するなんて、青キジさんが期日内に書類提出する位の確率だけど)
仲間が海賊に殺されたりしたら、一緒に泣いて、でもやっぱり私を気にかけてくれて。
そんな彼が、覇気を使えるようになったの。
すごいよね、本当に感動しちゃった。
でもね、そのせいで彼は私より早く出世しちゃったの。
悔しかった。
…いや、寂しかった。
だって彼が出世したら私、彼となかなか会えないじゃない。
認めるわ、彼が好きよ。
だからね、鎌をかけたの。私を見て欲しくって。
「ね…素敵でしょ?」
「そ、うですね。
僕も何度かお会いした事があります、すごい良い方ですよ。」
なんて言ってお見合い写真のプレイボーイをべた褒めするの。
そいつ、嫌な噂しか聞かないってあなただって知ってるでしょ。
女ったらし、身体は動くけど頭は悪いし、それにお金を流してるだとか…顔ばっかな男でしょ。
相変わらず、良かったですね、なんて言ってへらへらしてるもんで思いっきりほっぺの両端を引っ張ってやる。
「い、いひゃいなちび子ひゃん。」
「うっさい、そんな性格ブサイクと私をお似合いだなんて言った罰よ。
うけるわけないでしょ、破談よ!は・だ・ん!」
「…良かった」
え?
なんて言ってる間にほっぺを引っ張っている私の両手を取り自分の手を重ねるコビー。
「…ちび子さん、僕新世界の今クーデターが勃発しているロベリーという国に行かなきゃならなくなったんです。」
「そ、んな。」
ほらね、出世した彼はもうこんなにも早く行ってしまうんだ私を置いて。
…彼は私より優しい。
私より熱い何かを持っている。
今は、私より強い。
置いて行かれるんだ、なんてがらにもなく焦って寂しくて。
思いきり視線を反らす私に彼は私の頬に手を添えまっすぐに私の瞳の奥を見据える。
「ちび子さんも、一緒に行く事になりました。
よろしくお願いしますね。」
いつもみたいに人なつっこい笑みを浮かべる彼を見て、心の奥がとくんと跳ねる私は重い病にかかっているようだ。
「私、足手まといになるわ。新世界で役に立てるほど、強くなんかないもの。」
「じゃあ…
僕にちび子さんを守らせて下さい。」
誠実な彼が好き
守ってやる、なんて上から目線の言葉はいらないの。
力強い男より、彼の方が魅力的。
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