真っ暗闇の布団の中で、わたしは自分が壊した淡い日々の欠片に縋りついて泣いた。 破片が何度も胸を抉るのに、どうしても手放したくなくて未練がましく抱き締めて、その痛みにまた泣いた。 泣いて泣いて、そのまま泣き疲れて眠ってしまい、いつまで経っても朝餉の支度に出て来ないわたしを心配して部屋にやって来た土方さんに、鬼の形相で叩き起こされたのだった……。 あれから数日経った。 次の日の早朝から江戸に出張に行った山崎さんとは一度も顔を合わせていない。 山崎さんが帰ってきても合わせる顔がない……。 あの日の朝、お説教をしようとした土方さんは布団の上に正座するわたしの顔を見て眉間の皺を増やし、以後気をつけるようにと言って後は黙ってわたしの着物の帯を結んでくれた。 新八さんは二日酔いで頭が痛いとぼやき、平助くんは自分も飲みたかったとごね、左之さんはただわたしの頭をぽんぽん撫でてお膳を運ぶのを手伝ってくれた。 その日の朝餉は鼻がぐずぐずなわたしが作ったせいで味付けが物凄く濃かったのに、一ちゃんはすました顔で『問題無い』と言って無理矢理食べてくれて、沖田さんは『だってなんだか井戸に落ちちゃいそうだから』と水汲みを代わってくれた。 山南さんは泣きはらして荒れたわたしの頬に物凄く染みる軟膏を塗ってくれた。別の意味で涙目になったわたしを見た瞬間の、山南さんのどこか嬉しそうな笑みは忘れられない。 お昼には源さんがわたしがまた食べたいと言っていたからとよもぎの大福を買ってきてくれて、洗濯していたら通りかかった近藤さんが手の平いっぱいに金平糖をくれて、一粒食べたらほんのり甘くて、みんなの優しさにまた泣けた。 会いたいのに会いたくない。 会いたくないのに会いたくて仕方ない。 ……まだ一度も謝ってもいないのに、顔を合わせるのが怖い。 山崎さんが肩の力を抜ける時間を大切にしたかったハズなのに、自分勝手な暴走でそれをわたしが壊してしまった。 本、当に馬鹿……っ。 わたしは膝を抱えてため息をついた。 いつまでもこんな事をしていられない、ちゃんとあの日の失礼をお詫びしなくちゃ。 ―――数日塞ぎ込んで、ようやくわたしは顔を上げた。 戻 * 次 |