「っはぁ、はぁっ、」



駆け込んだのは自分の部屋。



飛び込んだのは布団の中。



わたしは掛け布団を頭から被って乱れた息を吐き出した。



どうしよう
どうしよう
どうしよう



山崎さんの寝込みを襲うなんて、なんという大それたことを……。



だいたい何でこんなことになったの?何で……



そうだ新八さんだ、あの阿呆が迫って押し倒したら好きになるって言うから…



「っ、」


そこまで考えて、わたしは自分の余りに幼稚で身勝手な思考に心底嫌気がさした。



違う、違う、違う、



新八さんのせいなんかじゃない。



わたしが焦ったから、
まだろくに親しくもなってないのに勝手に不安になってわたしが欲張ったから、



全部全部わたしが悪い。



わたしは布団に頭を擦り付けて口唇を噛んだ。



……山崎さんのあんな顔、初めて見た。



凄く凄く困惑していた。



山崎さんを困らせてしまった。



『こういう事は…困る、』



心底迷惑だっただろうに、それでもとても言いにくそうに放たれた言葉。



わたしが山崎さんを困らせて、気を遣わせて、安眠まで妨害した事を証明する言葉。



―――そしてわたしを拒絶する言葉。





『其の三、焦りは厳禁。追い詰めれば負の感情を目の当たりにする』





……その通りです伊東さん。



「……っ……ぅく……」



激しい後悔で胸が痛い。



自分が悪いのに、山崎さんの言葉に傷ついてしまっている自分が恥ずかしい。



だって好きなんだもん。
もっと近くに行きたかったんだもん。
早く特別になりたかったんだもん。





――好きになってもらいたかったんだもん――





子供じみた言い訳がぼろぼろ零れる。



ああ、わたしって馬鹿みたい。



みっともなくて格好悪くてどうしようもない。



山崎さんに合わせる顔がない。



だけど会いたい、
顔を見たい、
気配を感じたい、
側にいたい…。



だって好きなんだもん、無関心そうなのに実は物凄くよく周りを見ていて気を配ってくれる優しい山崎さんを、こんなにも大好きになっちゃったんだもん。



でもでもでも……。



「ぅ…っく…山崎、さぁん…」




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