―――で?



これはそういうことだと?



わたしの下で山崎さんが困惑したようにわたしを見つめ上げているのは、わたしが寝込みを襲って押し倒したからだと?



「……」

「……」



いつもより格段に見開かれた瞳と、乱れて少し露わになった山崎さんの胸元。



そこに漂う色気にぐらりと眩暈がした。





――山崎さんを、



わたしが襲った――





状況を理解した瞬間、わたしの全身の毛穴という毛穴から色んな汗がどっと噴き出した。



っ、誰か、



誰か嘘だと言って…!!



全身はぷるぷる震えるのに身体は硬直して動かない。



困惑の色を滲ませる山崎さんの瞳から目が離せない。



不味い、本当に不味い。



何でこんなことに……



頭の中が酔いではなく、混乱でぐるぐると回る。



何か言わないといけないことは分かっているのに、口がぱくぱくするだけで言葉が出て来ない。



そんなわたしの下で、山崎さんが心の底から戸惑っているように口を開いた。






「浅井君…」

「……」

「こういう事は…困る、」

「っ…」



少し掠れた山崎さんの声に、動かなかったわたしの身体が弾かれたように山崎さんの上から飛び退いた。



かぁっと頭に血が上る。



わたしは、わたしはなんてことを……



がくがくと震える足と抜けた腰を無理やり動かし、それはそれは無様な格好で、わたしはまるで這うように山崎さんの部屋を飛び出した―――。






終 / *
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