「あとは、色っぽいねぇちゃんに迫られたらやばいな」 「やばい…」 「ああ、やばい」 「どんな風に?」 「どんな風ってお前…、綺麗なねぇちゃんに迫られて押し倒されたら…」 「押し倒されたら?」 「そこまでされたら、【据え膳食わぬは男の恥】だろ?」 「男の恥…」 「真剣に聞くな香央」 向き合って真顔で呟き合うわたしと新八さんの間に左之さんが割って入った。 「【据え膳食わぬは】」 わたしはぐっと盃のお酒を飲み干す。 「【男の恥】」 「香央!?」 盃を置いて立ち上がり、部屋を出ようとするわたしを左之さんが焦った様子で止めようとした。 が、 「左之っ!止めてやるな!行かせてやれ!香央がようやく男になれるんだ!門出を祝ってやらなくてどうするんだ!」 「うおっ」 新八さんががばりと左之さんをその馬鹿力で拘束し、左之さんはバランスを崩して新八さんと一緒に畳の上に倒れ込む。 「頑張れよ!香央」 「やばい…据え膳…男の恥…」 新八さんの声援が遠くに聞こえたような気がした―――。 戻 * 次 |