「にしてもよ、左之。雛菊は確かに俺を誘ったんだよ、それは間違いねぇ!」 「どう間違いねぇんだよ」 「雛菊は俺の手を握ってこう、甘ったるい声で『新八さんみたいな逞しい人が来てくれたら嬉しい』って!」 「誰にでも言ってんだろ」 「んなことねぇよ!」 「じゃあ、なんで雛菊は来なかったんだ?」 「それが…、わっかんねぇんだよなぁ…」 新八さんは片手で頭を抱えて項垂れた。 「それってよ…、『部屋に来て』じゃなく、『店に来て』ってことなんじゃねぇか?」 「な、なにぃ!?」 左之さんの言葉に、思い切り衝撃を受ける新八さん。 どうやらまたおねぇさんにフられたらしい。 めげないなぁ、新八さん……。 わたしは盃を呷ってため息をついた。 「はぁ…」 「おおお、どうした香央!なんか悩み事か!?」 新八さんは隣にいたわたしの肩を抱いて豪快に笑いながらバンバンと叩いた。 新八さん立ち直るの、早っ!! 「う、ごほっ、」 「お、わりぃ」 噎せるわたしの背中を新八さんが無骨な手でさする。 ええい、馬鹿力め。 局長と副長と総長と山崎さん以外はわたしが女だとは知らないので、新八さんも容赦ない。 咳込んだせいかなんなのか、一段と酔いが回ったように身体が熱くなる。 「……ね」 「ん?」 新八さんが、呟くように言ったわたしの言葉尻を捉えた。 「……、どうしたら男の人は女を好きになるんでしょうね…」 新八さんと左之さんが揃って、「はぁ?」と言う顔をした。 「どうしたら、好きになってもらえるんでしょうか……」 「香央、それって―――」 「なんだお前、ようやく女に目覚めたのかぁ!?」 左之さんの言葉を遮って、新八さんがなぜか嬉しそうにわたしの両肩に手を置いた。 どこで女に目覚めた、わたし…? 戻 * 次 |