「浅井君……」 山崎さんの驚いたような顔が間近に見える。 それは吐息がかかる距離。 「……酔って、いるのか?」 怪訝そうにわたしを見上げる山崎さん。 わたしの身体は山崎さんの上にあって、わたしの両手は山崎さんの両耳のすぐ側の布団に手を突いて、わたしの両脚は山崎さんの腰を跨いで両側についている。 薄闇の中で、山崎さんの瞳の色まで覗ける距離で、わたしは呆然と山崎さんを見つめ下ろしていた。 熱に浮かされていたように混濁していた意識が、だんだんと鮮明になってくる。 ……え? なにこれ、どうして……? まだ朧がかる頭の中を、わたしは必死で探る。 いったいなぜ、 どうしてこんなことに―――……? 十六夜の月が照らす風の冷たい夜半過ぎ、新八さんと左之さんが相当出来上がった状態で徳利を持って部屋に乱入してきた。 いつもなら適当にあしらって追い返すのに、この日はなんだか無性に飲みたい気分で……。 新八さんと左之さんが島原のおねぇさん達のことを話している間、わたしはずっと盃を呷ってはお酒を注ぎ、呷っては注ぎを繰り返していた。 「おおー!いい飲みっぷりだなぁ、香央」 新八さんはわたしの飲みっぷりを見て、上機嫌でわたしの肩を叩いた。 その振動なのか、なんだか頭がぐらぐらする。 戻 * 次 |