神様は意地悪だ、特に大腸の神様って奴はドS具合が半端ない。

特にストレスがあったわけでも何でもなく、ここ3日ほどは便が一向に出なかった。

環境や食べるものが変わるとやっぱり3日ほど出なくなるのだけど、そこを過ぎれば自ずと身体は慣れて快便へとまっしぐら。

特にこの江戸時代での生活は本当に人間らしい生活をしていると、その快便具合がはっきりと教えてくれていた。

まず、日の出と共に起きる、時間にすれば朝5時前だ、早いときは4時ちょっと過ぎに源さんなんか起床している。

その代わり電気がないので夜遅くはあまり起きていないのが本当の話だ、急ぎの仕事なんかが溜まっていなければ普通に9時とか10時にはみんな床に入っていたりする。

朝ご飯が早ければ夜ご飯だって早い、夕方と言っても過言ではない時間帯に食べるのではないだろうか。

わたしなんて毎日不規則な生活を送っていて起きているときは日が昇るまで、休みの日は完全に昼まで寝ている。

ご飯の時間も疎らだし、面倒なときは普通にファーストフードやコンビニのお弁当を買っては食べて、栄養は正直偏りがちだ。

だけどこの時代では菜物や干し魚が中心で、はっきり言ってこれ以上の健康的な生活はないのではないだろうか。

未だに朝は起こして貰えなければ起きないけれど、それでも最初の頃よりは寝起きがいい。

お布団離れも良くなったし、またあまり食事をしなかったにも関わらず何故か沢山食べるようにはなれた。

おかずの量に対してご飯の多さが気になるところだけど、流石釜焚きというところか。

ぶっちゃけ現代のご飯よりも甘みがあって美味しいから、おかずが無くとも容易に口に運ぶことが出来るのだ。

よく動いてよく食べてしっかり寝る、人間の三大欲求を満たせばこんなにも快便で調子のいい身体もないと、わたしは最近つくづく実感していた。

なのにここ3日ほど怪しいほどに便が出ない、わたしの身体に何があったのか、最近が順調過ぎて逆に便が出ないことが怖くなる。

また快便期間が続いていると身体がそれに慣れた所為か、ちょっと出ないだけですぐにお腹がパンパンに張って言葉以上に苦しくて仕方がない。

だけど如何せん、ここは男の園・新選組、よく働いてよく歩いてよく稽古をしてよく食べてしっかり寝る便秘知らずの連中ばかり。

この苦しみを分け合えるのは同じく便秘持ちのもえこしか居ないと、そう部屋のど真ん中、畳の上でひとり仰向けになりながら腹を摩っているわたしは此処には居ないもえこを思って溜息を吐いた。

そうだ、今日は月に2回ほど連れて行って貰える巡察の日だ、確か今日の巡察は4番隊と10番隊だったはず。

元々巡察に連れて行って貰えることはなかったのだけど、それでもずっと屯所に入り浸りっ放しも可哀想だと近藤さんが偶には連れて行ってやったらどうだと提案してくれたのだ。

それが2月ほど前の話、別に元々出不肖のわたしたちは屯所の中にずっと居るのも構わないですよ、なんてことを言っていた。

けれど、いざ着いて来てもいいと言われたらやっぱり何処かわくわくしてしまって、土方さんからOKサインが出ればひょこひょこと着いて行ってしまうのだ。

わたしは前、新八さんと源さんの隊に着いて行かせて貰った、その次は総ちゃんと平助の隊だ。

次は斎藤さんの隊に着いて行きたいなぁ、なんて思うのだけど斎藤さんの巡察のときには色々と土方さん直々から下る仕事なども行っているようで今までOKサインは出なかった。

勿論、今現在も渋られているし、きっと何だかんだ色々足手まといのわたしたちが居たら都合の悪い問題があるのだろう。

兎に角、連れて行って貰えるのはひとりずつ、今日はもえこの番。

お昼の巡察は早くても日暮れ前になると、わたしはパンパンに張って苦しい腹を摩りながら静かに眼を瞑って風は入らないが涼しい部屋の中で浅い眠りについた。










それからどれくらい経ったのだろうか、気持ちよく転寝をしていたわたしを叩き起こしたのは下っ腹に走る猛烈な痛みだった。



「…う、あ…あ………っ」



ぎゅる、ぎゅるる……と絞って引っ張るような痛みが下っ腹を響かせて、わたしは仰向けに寝転んでいた身体を即座に横向きに変え縮まる。

丸くなれば痛みが退くわけじゃない、だけど丸くなってしまうのは引っ張られる痛みを何とか戻そうとするからだろう。

いや、そんな理由はいらない、兎にも角にも今は腹が痛いのだ、それからつい窄めてしまったのは尻の孔。

くっと力を込めたそれは便意をわたしに教えてくれて、これは不味い、大腸の神様がお怒りになられたと。

わたしはあまり震動を与えたくない身体を静かに起こして襖を開け、それから小股で床を滑るように厠へと急いだ。

勝手に腸の道路工事ストップさせといて突然開通させるなんてあんまりだ、それも土砂が崩れるように一気に雪崩が来るから溜まらない。

だけど尻を押さえたところで不恰好以外の何者でもないし、それで便意が納まるわけがないので気持ち少しだけ前屈みにお腹を抱えて摺り足で出来る限り急ぐ。

わたし個人としては便をすることは人間として当たり前のことだから、聞かれたら平然とうんこ行って来ますとか言っちゃうタイプ。

でもこの時代は流石にそうはいかない、女がそんなはしたない言葉を使うなど言語道断だ、厠に行くにもなるべくこっそり行った方がいいかもしれない。

それでもそこまで周りに気を使うことなど出来ないわたしは、兎に角急いで、誰にも合わないように急いで、だけど走ることなどは出来ないから摺り足で厠への廊下を歩いた。

わたしたちが借りている部屋から厠までは比較的近い、だけどそれまでには難所を幾つか通らなければならないのだ。

まずは斎藤さんと総ちゃんと平助の部屋の前を通る、廊下を挟んで奥側が左之さんと新八さんの部屋だから曲がってしまうそちらは通らない。

廊下を曲がってすぐにあるのはいつも会議をしたりご飯を食べたりしている広間、その広間前の庭には決まって必ず誰かが居る。

そこをしっかりスルーして通り過ぎ端の厠へ行く、たったそれだけなのに急いでいるときに限って素晴らしく空気が読めない人たちなのが新選組の面々だ。

以前も行こうとしたら近藤さんにお茶をしようとお茶を出され、先に用を足してきますと言えなかった小心者のわたしは酷く我慢をして大変だった。

その上、行こうとしたら新八さんが踏ん張ってらっしゃったもんだから本気で厠の戸を叩いて泣きたくなったものだ。

だから今日は真っ直ぐ行けますようにと、わたしは最初の難関に脚を踏み入れた。

視線は真っ直ぐ前を向いているけれど頭の中はフル活動だ、今日のみんなの位置を確認してみることにする。

新八さんは確か今日は隊士に稽古を付ける日だ、昼過ぎにも道場から声がしていたはず。

斎藤さんは確か午後から非番で、仕事も手許にないのか一刻ほど前くらいに稽古についた新八さんの手伝いに行った気がする。

平助はご飯のときに新八さんから暇なら道場に来いとか言われてたし、近藤さんは今日は外に出ていていない。

土方さんは書き物があると言って部屋に篭ったきりだ、となると残りは行方の解らない総ちゃんになる。

そう思考を張り巡らせながらも何とか人気の無さそうな部屋の前を通り過ぎ、廊下を曲がろうとしたとき、



「みうこ、」



庭を挟んだ反対側の廊下から声が掛かり、わたしは身体を震わせると同時、酷く深い溜息を吐いた。

その声は特にイライラしているわけではなさそうだけれど、それでも何処か棘がある土方さんの声だ、聞き間違えようがない。

小さくもなく大きくもないいつものその声に無視など出来るはずもなく、渋々顔ごと視線を声のした方へ向けて見ると何処か面倒そうに頭を掻いている土方さんが居た。



「悪いんだが、茶を煎れてくれねーか」



何でこんなタイミングでお茶を頼むんだよ、いつも頼んでなんか来ないくせに。

いや、いつも頼んでこないからこそこの頼みは断れるものじゃない、そういえば昨日は寝ていないとか聞いた気がする。

だから仕事のない斎藤さんも非番だからと言って休んではいられないとかで稽古に行ったんだっけ、副長が休んでいないのに、みたいな。

ホント真面目というか、あの人も休み知らずだなぁ、なんて思いながらわたしはゴロゴロとなるお腹を抱えながら解りましたと返事をして台所へと向かった。

台所へ入れば丁度お茶をしようとしていたのか、湯を沸かしていた源さんとはち合って運良く沸かす手間は省けた、のだけど、



「みうこちゃん、実はさっき茶菓子を買ってきてねぇ、それも一緒にトシさんに出してやって欲しいんだ」

「あ、お菓子?いいですよう!でも、どこに…」

「それがうっかり戸口のところに置いてきてしまってねぇ、悪いんだが、お茶を煎れておくから取ってきて貰えないだろうか?」



そう言われて嫌です、なんて言える人間が何処に居るのだろうか、少なくともわたしの口からは冗談でも言えそうにない。

仕方なく、じゃあお茶はお願いしますと頭を下げて玄関先までまた小走りで脚を早めた。

お腹のぎゅるぎゅるという音は外に漏れるんじゃないかというほどの大きな音を上げている、だけど不思議とさっきよりは痛みがないようにも思える。

これはもしかしたら慣れてきたのか、それとも今一旦退いているのだろうか。

どちらにしても第二派が来る前にとわたしはあからさまに抑えるのを止めて静かに目的の場所まで歩を進ませることにした。

玄関口はすぐそこだ、案の定特に誰かに合う気配もなく辿り着き段差を降りると丁度足許付近に薄緑色の和紙のようなものに包まれた包みがある。

ああ、もしかしてこれかと手に取るために腰を屈めたと同時、再びわたしのお腹に激痛のような衝撃が走ってその場で一時全ての動きを静止。

ダメ、もうちょっと限界チックだ、だってもうこれ水っぽいものとか出そう。

マジで急がないとわたし一応夢主なのにとんでもないことしでかす可能性がある、夢主が屯所の中で脱糞するとか流石にそれは避けなければいけない。

お願い大腸の神様、どうか、どうかあと5分!あと5分だけでいいの、大人しくしていて!

ケツの孔にATフィールド10枚、ううん、漏れなければ何枚でもいいから本気で頼む!

そう身体はしっかりと眼を瞑って瞑想しながらも心の中ではこれでもかというほど叫んで、わたしは落ち着いた頃を見計らって静かに腰を上げた。

手には重みなど感じないほどの軽い菓子、何が入っているのか解らないけれど握りつぶせば中身が飛び出るものではなさそうなそれ。

少し指で動かしてみれば触れ合った菓子同士が軽い音を立てて、なるほど、勢いに任せて握り潰せば粉砕される系ですねとひとり納得しながら、わたしは踵を返した。



「源さ……お待ちどうさま…」

「ああ、悪いねぇ、無事で良かった」



勿論その言葉はわたしへのことではなくて菓子への心配だとは解ってる、意地汚い連中が多い中、菓子なんか拾ったら誰のものであろうがあっという間に胃袋の中だ。

だけど現状、いっぱいいっぱいのわたしにはその言葉は労わりの言葉に聞こえてしまい、ホントに良かったですと尻を押さえながら頷いてしまうのだ。

そんなわたしのことなどは流石に知る由もない源さんは、わたしの手から包みを受け取ると丁寧にそれを開きながらひとつを手に取るとお盆に乗せ、小さな菓子入れの上に静かに置いて、



「みうこちゃん、食べるかい?お団子の美味しいお店があるだろう?あそこのなんだ、美味しいと評判でね」

「…………あ、いえ、今日はちょっと…」

「おや、食べないのかい?もしかしてあまり好きじゃないのかい?かりんとうは」



言われて口許を歪ませてしまったのはそのままの意味だ、下品なことを思うつもりなど更々なかったのだけど思ってしまったのだから仕方ない。

そんなまさか、かりんとうがうんこに見えただなんてそんなまさか、わたしだって信じたくない。

だけど色、形、流石にその光沢はないけれども見てしまえば今いっぱいいっぱいのわたしには全部そっち方面に頭が行ってしまうわけで、そこは責められても仕方ないのだ。

ごめんね、源さん、今はそれは口に入れる気分になれないしどちらかというと、その、あの、出したいんだ、いやマジで。

この時代のかりんとうは口にしたことがないし、興味はある、だけどタイミングが非常に悪いというかある意味凄くいいと言うか。

兎に角今はごめんなさいと、わたしは素直に今日はお腹がいっぱいでと零して土方さんに持っていくためのお盆を受け取った。

大丈夫かい?なんかあったのかい?そんな風に心配してくれる源さんはとても優しい人だ。

だけど違うの源さん、わたしはただ、厠に行って出すもの出したいだけなの、もうお尻の中がいっぱいいっぱいなんだ。

カッツカツでATフィールド壊れそうなんだ!やめてよう!うんこ漏らしちゃった夢主とかやめてよ、わたしが可哀想!

とりあえず薬は貰って飲んだので大丈夫ですと嘘を吐きその場を後にしたけれど、わたしはそろそろ形振り構っては居られなくなって来ていた。

震える手でお盆を運びながら、半ば壁に沿うように歩みを進めて土方さんの部屋に辿り着くと彼はかりんとうじゃねぇかと眼を丸くして声を上げて。

あれ?土方さん、かりんとう好きなのかな?なんてお盆ごと傍に置くと源さんと同じことを言われた、お前も食えよと。

だから!だからそれは今わたしにはうんこにしか見えないんだからね!あんたわたしにうんこ食えって言うのかよ!

いや、流石にそんなことは言えないし、こんなの八つ当たり以外の何物でもない。

言った瞬間、早く厠に行って来いと怒鳴られた後、すっきり出して来たところに長い説教が待っていそうでそんなこと、恐ろしくて考えただけで身体が縮こまってしまう。

恐ろしいことを考えれば考えるほど、お腹はストレスを受けるかの如くぎゅるぎゅる鳴って早く出してくれと叫んでいる。

もうダメだ!耐えられん!わたしは少し震えて掠れ気味になっている声を絞り出した。



「いえ……あの、あっちで戴けるので」

「俺はこんなに何本も入らねぇから言ってんだよ。源さんだって自分の分はあるだろうが、俺にこんなに渡すこともねぇよ。源さんの分を取ってやるな」

「………あ、でも、」

「俺は1本で充分だ、だから残りはお前が持っていけ。それでもどうしてもって言うんなら、有り難く貰っとけ」



言うと同時に引き出しを開けて和紙を取り出すと4本あったそれの内3本を和紙に包み、ほれとわたしに手渡してくる土方さん。

解った、源さんに気を使えと言うことですね、よく解りました、これは後で忘れた頃に頂きます。

それでいいでしょう?勘弁してよ、もう!

震える手を持ち上げて両手で丁寧に受け取ると、わたしはその腕を下げることなく腰を持ち上げて気持ち少し一礼する。

一礼するときに腹に若干力が入って空気が漏れそうだけどそこは我慢、こんなところで屁扱いたら土方さんの部屋が大変なことになってしまう。

いやホントに下痢のときの屁は何だってあんなにも臭いのだろうか、充満率も半端じゃないし人に及ぼす影響力は殺人級もいいところ。

そりゃあね、人間だから仕方ないよ?誰しも経験はあるだろうし、そんな排泄物からフローラルな香りがしたらわたしはそいつを人間だなんて認めない!

誰しも綺麗なところがあって汚いところがあって、だからこそ人間なんだよ。

弱いところも強いところも優しいところも狡いところもね、そうやって良いところも悪いところも全部ひっくるめて人間なんです。

あれ?何でこんなどうでもいいこと力説してんの、わたしおかしい。

もう腹が痛過ぎて思考までおかしくなってきたというか、そんなもの全部通り越してなんかもうわたし泣きたい。

後ろに後退りするようにケツから部屋を出た姿がそんなにも見苦しかったのか、土方さんは何でそんな出方すんだよ、普通に出ろなんて眉間に皺を寄せたけれど今はそれどころじゃない。

戸を閉めたいけれどあまり腕に力を込められない今、その少しの力を分けることすら惜しいと歯を食い縛りながらも部屋を出て、わたしは溜息を吐きつける暇もなく一歩脚を踏み出した。

厠へ向かう距離は少しだけ遠くなった、何故ならばまた自分の部屋の前を通らなければ行けない道のりだからだ。

手に持ったかりんとうを厠に持って行くわけには流石に行かないと、途中の自分の部屋にそれを放り込んではみたけれど如何せんこれ以上はマジでヤバイ。

本気で脱糞夢主になりかねない、もういい加減作者マジで自重してくんないかな、そう心底顔を引き攣らせながら部屋の戸を閉めた瞬間だった。



「みうこ、今急いでいるか?」

「…………」



ある意味空気が読めないことに置いては新選組内でも首位を争う斎藤さんがこっそりと部屋から顔を出して、わたしは一瞬金縛りにあったかのように身体が固まった。

マジでいい加減にしろと殺意が生まれる、だけど斎藤さんからこうして何か用がありそうな感じで話しかけられること自体滅多としてないわたしの脳裏はライフカードを求めてグルグルとフル活動中だ。

それでもすぐにうんともすんとも言えないのはまさに今、ケツが限界なわけで、



「えと、どうか…したの、んです、か?」



カタコトに、途切れ途切れに、敬語なのかタメ語なのかどっちかはっきりしろよと自分でも突っ込みたくなるような言葉が出た。

一応だ、一応聞いてみないことには何も始まらない、もしかしたら今じゃなくて後ででも構わないことかもしれないんだから。

いや、でもこのタイミングで出てくるってことはもう絶対嫌な予感しかしないわけで、だけどケツが限界で背中に冷や汗が湧き出てくる。

今わたしの顔はきっと笑っていない、引き攣っている、わたしは常に笑っているタイプの人間だから真顔なんてレアだよ、レア。

だけどそんな異変には気付かないのか、特に気にする気がないのか斎藤さんは部屋に入ったまま出てくる気配を見せずに口を開いて、



「すまん、入用で今部屋から出ることが出来ん……その……要らぬ手拭いを持って来ては貰えぬだろうか…」

「……………」

「乾いたものと濡らしたものを持ってきて貰えると助かるのだが…」



うん、もう泣いてもいいかな?でも嫌だなんて言えない、言えないよ、斎藤さんの頼みを嫌だなんて言えない。

そんなことするくらいならばもうあの木陰に隠れて用を足す…のは果てし無く遠慮したいので、仕方なくもう少し、あと少しだけ頑張ってわたし!と鼻から息を吸い込んで首を縦に振った。

本当はもう空気も取り込みたくない、取り込んだ分押し出される気がして唾液を飲み下すのも嫌だ。

だけど息をしなければ厠に行く前に死んでしまうという罠が待っているために、わたしは更にケツの孔に力を込めてその場を後にした。

斎藤さんに頼まれたのは要らない手拭い、それも乾いたものと濡らしたものをそれぞれ。

一体そんなもの何に使うと言うのだろうか、何よりも要らない手拭いなど何処にあるのだろうか。

わたしは気持ち少しだけ荒くなった息を肩で流しながら、とりあえずそういった細かいものや備部品の類を管理しているだろう人をリストアップして探すことにしてみた。

とりあえず源さんはさっき居たので源さんを探すのが一番手っ取り早い気がするけれど、布の類はこの間ザキさんがいっぱい抱え込んで歩いていたのを見た気がする。

わたしたちが此処に来てからはそんなこと一度もないけれど、新選組の仕事は下手をすれば死傷者が出ることが多くあるという。





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