鮮血の女王が動く
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「"アリス"を見つけただって?」

 血のように濃い赤を基調としたドレスを纏い、玉座に座る若々しくも気品に溢れた娘に、白兎はゆっくりと頭を垂れて「是」と答えた。

「で? "アリス"は今どこにいる」
「それが、その、泥棒猫に邪魔されまして、今どこにいるのかわからない状況です。はい……」

 しどろもどろになりながら答える白兎に舌打ちすると、娘は指を鳴らし兵を呼んだ。

「探せ」

 短く簡潔に命令を下す。
 誰を、なんて野暮なことを聞く兵は彼女の配下にはいない。

「逃したら、お前らの首をはねるぞ。よいな」

 気安く、蟻を足で踏み潰すように「はねる」と口にする娘。今までも、気に入らないものがあれば、例え重鎮であったとしても切って捨てる。
 冷血無慈悲な鮮血の女王陛下。
 彼女の言葉こそ、この国の法律。なにをしても、彼女なら許される。
 誰も逆らえない。
 兵は敬礼すると、みな足並みを揃えて応接間から出ていった。

「なにぐずぐずしてる? お前もさっさと探しに行け。見つけられなかったらお前の首をはねる。よいな?」
「わ、わかってます。女王陛下。例え火の中水の中、"アリス"を見つけ出し、陛下の前にお連れいたします」
「そうか。なら良い。早よ行かんか。お前を見ていると苛々するわ」

 しっしっ、と厄介者を見るような目付きで手を振る女王の視界には、白兎の姿はない。あるのは"アリス"への想いのみ。




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