※黄瀬君と黒子君が女の子





 母曰く、昔から僕はまるで女の子らしくない女の子だったらしい。
自分でも自覚はある。
スカートもリボンもフリルもあまり好きじゃない。
かわいいとは思うけれど、どうしたって動きやすさを重視してしまう。
髪だって邪魔だからと伸びたらすぐに切るせいで、肩に届いたことはない。
こんな風に女の子らしさのかけらもない僕だけれど、たった一つ女の子らしいと言える部分があった。
それは、きらきらしたものが大好きだということ。
例えば昔友達からもらったビー玉、旅行先で買った硝子細工、母の指輪に嵌まった青い宝石。
きらきらしているそれらを眺めていると満ち足りた気持ちになった。
だから多分、僕が彼女に恋をしたのは必然だったのだろうと思う。
だって彼女は、黄瀬さんは今までに見たどんなものよりもきらきらと輝いていたから。




「黒子っち」


一緒にお昼食べよ。
そう言って笑う黄瀬さんはとても素敵な女の子だ。
日に透けて輝く金色の髪、吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳、すらりと伸びた手足。
黄瀬さんは、今までに見たどんな綺麗なものよりも綺麗だった。


「黄瀬さん」
「ほら、早く行かないと昼休み終わっちゃうっスよ!」


早く早く。
そう急かして、黄瀬さんは僕の手を引っ張ってぐんぐんと進んでいく。
もう片方の手には水色の布に包まれた小さな弁当箱。僕の弁当箱だった。
うっかりその存在を忘れていた僕に気が付いてくれたみたいだ。


「ありがとうございます、黄瀬さん」
「ん、何がっスか?」
「お弁当、すっかり忘れてて」
「そ、そんなお礼なんていいんっスよ!」


友達なんだから当たり前なんっス。
頬をほんのり赤くしてはにかむ黄瀬さんに鼓動が早くなる。
きっと僕の顔も赤くなっているはずだ。
黄瀬さんに気づかれないように、繋がれた手をほんの少し強く握れば甘い何かが胸の内に広がる感覚がした。






 お昼休みの屋上に人はいない。
暦の上ではもう秋だけれど夏はまだあちこちに残っていて、それは屋上も例外じゃない。
今日の最高気温は三十一度。
そんな日の昼休みに屋上まで来る生徒なんて僕等くらいだ。


「黒子っちに、聞いてほしいことがあるっス!」


顔だけでなく耳まで真っ赤に染めて突然そう告げた黄瀬さんに、急に苦い何かが込み上げてくる。
これ以上聞いてはいけないと本能が警鐘を鳴らす。
けれど僕の喉から言葉が零れる前に黄瀬さんは言ってしまった。


「好きな人ができたんスよ」


そう笑った彼女は今までで一番きらきらと輝いていた。
それからの会話はあまり覚えていない。
記憶に残っているのは黄瀬さんの笑顔と彼女が好きだと言った人の名前だけだった。




ぐしゃり潰れた

20140731











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テーマ「人外ファンタジー」
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