爽やかな笑顔が苦手だ。 囁くみたいな声も苦手だ。 背が高くて見上げなきゃいけないところも苦手だ。 他にも色々な点を総合して判断した結果、自分は彼のことが苦手なんだという結論に落ち着いた。 そうか。 俺は大王様が苦手なんだ。 「なので、それ以上俺に近づかないでください」 「ごめんちょっと意味わかんないんだけど」 そういうと大王様は俺の言葉なんか無視して近づいてくる。 だから、俺も同じくらい遠ざかった。 「なんで逃げるの?」 「大王様が近づいてくるからです!」 というか、なんで近づいてくるんだよ。 普通苦手ですって面と向かって言った相手なんて構わないと思う。 なんだって大王様は俺に構うのか。 それがわからなかった。 「なんで大王様は俺なんかに構うんですか」 「だってチビちゃん面白いし」 面白いってなんだ、面白いって。 大王様が面白くてもこっちは面白くもなんともないのに。 「っていうかさあ、チビちゃんは俺の何が苦手なわけ?」 「さっき言ったじゃないですか」 「だから具体的に」 俺の顔と声と身長とその他諸々が何で苦手なのって聞いてるの。 いつのまにか距離を詰めていた大王様に右腕をつかまれる。 顔を上げるとすぐ近くに大王様の顔があって、茶色の目に間抜けた顔をした俺がいた。 そのことがなんだか落ち着かなくて、早くその目から逃れたくて。 咄嗟に出た言葉の意味は俺にもよくわからない。 「だって、大王様きらきらしてるから」 見てると変にお腹がどくどく痛くなるから、苦手だ。 そう言うと、大王様は驚いたふうに目を見開いた。 ついでに俺の腕をつかむ力が弱くなったので、チャンスとばかりに逃げ出した。 逃げる必要なんてないのに、気付けば全速力で走っていた。 顔が熱い。 なんでかはわかんないけど、大王様といるとこんなことばっかり起こるから。 だから、俺は大王様が苦手なんだ。 20140802 |