天馬は優しい。 あったかくてふわふわした優しさでもって、彼はいつも太陽を受け入れてくれる。 今だってそう。 まだ帰ってほしくないって言ったら、しょうがないなぁって笑って一緒にいてくれている。 だから太陽は天馬に甘えてしまうのだ。 天馬がずっとここにいてくれればいいのに。 ずっと一緒にいてくれれば、それ以外はなんにもいらないのになあ。 そんなこと、口が裂けても言えやしないけど。 「ねえ天馬」 「なあに、太陽」 「抱きついてもいい?」 「え、」 「いや?」 「べつに嫌ってわけじゃないんだけど」 「けど?」 「なにをどうしてそういう流れになったの」 「え、やだなー天馬。もとからそういう流れだったじゃんか」 「え、ええええ?」 目を白黒させてあたふたする天馬がおもしろくて我慢できずに抱きつけば、反動で天馬がパイプ椅子から落ちかけた。 うおって、変な声があがるのがまたおもしろい。 「たいよう危ないだろ!!」 「だって天馬おもしろいんだもん」 「わけわかんないから」 そうは言いながら天馬は太陽を振りほどかない。 またしょうがないなぁって言って笑うのだ。 いいかげんどこかで駄目だとか嫌だとか言ってくれればいいのに。 そうじゃないと太陽はもっと天馬に甘えてしまう。 天馬なしではいられなくなる。 いつか失ってしまうことが決まっているのに、いらない希望なんて持って生きたいだなんて思ってしまったらどうしてくれるの。 駄目って言ってよ。嫌って言って突き放してよ。 そうすれば諦められるんだよ。 「太陽泣いてるの?」 「てんま」 どうしたの、どこか痛いの。 涙を拭ってくれるてのひらは暖かい。 この優しさに今だけは溺れてしまいたかった。 「嫌」じゃなくて「駄目」って言うから、また調子に乗る title 告別 20140731 |