16.たっぷり、愛してやるよい

Side:***



花吹雪が舞う桜並木を二人で散歩して、レイさんの待つ荷車まで進んでいった。
そこまで繋いでいたマルコさんの手を離すのは名残惜しい気がしたけど、宿まで向かうには一旦離して車に乗りこまなければならない。
ロープを一旦離したレイさんが、片手を差しだしてくれるから、私が先に乗り込むことにした。
レイさんのぷにぷにした肉球に手を乗せようとすると、そこから外れた手が私の腰に回って、ふわりと持ち上がる感覚がある。
そのまま、車へと乗せてくれたようだった。


「ガオッ」
「わわっ…あ、ありがとうございます」
「てめェ、何してくれてんだい」


触んな!と言いながらレイさんに掴みかかるマルコさん。
真剣な表情ではあるものの、相手がふわふわのもこもこだから、全く戦闘感がなくて、じゃれ合っているみたいだった。
なんか、可愛い。
さすがにマルコさんが本気を出したら、レイさんは大変なことになるだろうから、程よく手を抜いている様子で。
大きな手に捕まれているマルコさんも、なんだか可愛らしかった。
暫くじゃれ合いは続いたものの、二人とも到着が遅れることに気が付いた様子で、同時にすっと手を離した。
ぴょんっと飛び上がって自力で車に乗ってくるマルコさん。
無言のまま、ロープを手にしてゆっくりと引き始めるレイさん。
お遊びは終わってしまったようだ。
もっと見ていたかったな、なんて思ってしまう程、本当に可愛かった。


「やきもちですか?」


私のすぐ隣に腰を下ろし、二人の間に僅かな隙間が出来ていることを知ると、ぐいっと私の身体を引き寄せる。
あ、マルコさんが寄るんじゃないのね。
でもその自然な流れが、なんだか嬉しかった。
私がいることが、まるで当たり前のことのような雰囲気で。


「…はっきり言うなよい」
「だって、嬉しくて」


正直に伝えると、いくらか照れている様子のマルコさんが、私の頬へ掌で触れ、それから身を起こして唇に軽いキスをしてくれた。
また、短いキス。
邪魔されるから、というさっきの会話を思い出したけども。
レイさんは走るのに夢中で、こちらを振り返っている様子はなかった。
それをマルコさんも確認してか、もう一度唇を重ね合う。
幾度か触れ合った後に、背中に腕を差し入れられる感覚があった。


「***、上に乗らねぇかい?」
「…上、ですか…?」


疑問形で伝えられたハズなのに、マルコさんの中では決定事項らしかった。
その目線に捕えられると、背筋がゾクリとした。
色っぽい目で見つめないで欲しい。
暖かい春の陽気に当てられて、私も溶けてしまいそう。
触れられてる背中がどんどん押されて、ソファから上半身を浮かせることになってしまう。
こんな風にマルコさんの上に座るのは久しぶりで…じゃないと思う。
つい先日も、ベッドで座って…。
その後は思い出すと、顔が赤くなるからやめておこう。
だけど躊躇するのは、前にレイさんがすぐ見える位置にいるからっていう理由だけだ。
恥ずかしいけど、嫌ではないから。
言われるまま、ソファから身体を起こして、マルコさんと対峙する位置に移動する。
促されるまま、片足でマルコさんを跨いで、その上にゆっくりと腰を下ろしていく。
完全に座ってしまう前までは、私の方が高い位置にいる為、肩に手を乗せて捕まらせて貰った。
そのままゆっくり腰を下ろしていく…。
と、続けていたんだけど、ぽすっとマルコさんが私の胸に顔を埋めてしまった。
驚いて僅かに腰を引いたものの、マルコさんの腕にがっちり押さえつけられて、身動きが取れない。
ちょっ…恥ずかしい!
っていうか、なんか、動いてる…!?
マルコさんは顔を埋めるだけじゃなくて、胸元に唇を這わせて食すように何度か開閉を繰り返してる。
まだ、胸の膨らみのところだけだからいいけど…。
声が出ていまったらどうしよう…!?
頭を抱きしめるわけにもいかず、かといって離すことも出来ず、ただマルコさんに捕まっている手に力が入ってしまい、肩をぎゅうっと強く握ってしまう。
着ているのは薄いシャツで、すぐ下の薄いキャミとブラでは心もとない。
それは、ブラの上からでもはっきりとわかる感触で。
どうしよう…。
ほんと、もうちょっと上に移動されたら、声出ちゃうよ。


「マルコさん、…ね…だめ…ッ」


ようやく声を出して、小さくマルコさんに伝えると、思った以上にあっさりと顔を上げてくれた。
私を見上げる瞳が、上目づかいになっていて、それを見て興奮するという男の人の気持ちが少しわかった気がした。
確かに、可愛い。
そのうち背筋を伸び上がらせたマルコさんに、唇を塞がれて、再び対峙してのキスをすることになった。
ようやく、腰をマルコさんの足の上に下ろせたのも、この時がやっとだ。
柔らかな唇は、何度も触れたり離れたりを繰り返して、どの都度、水音が鳴っているけど、車が走る音で掻き消されていく。
良かった…。
だってマルコさんのキスが、次第に激しくなってしまっているから。
外でこんなこと、滅多にしないから、誰かに聞かれたらなんて想像すると、本当に困る。
口内にマルコさんの舌が挿入された時、いよいよまずいと体の芯が震えた時、荒い呼吸を繰り返す唇が解放された。


「…はぁ…、…ッ…急に、ど…したんですか…」
「妬いた」
「今の、で…?」
「いや、***ここ、エースに抱かれただろい」
「言い方!…移動手段じゃないですか」
「知ってるよい」


一度頷きを見せてくれるも、への字に引き締められた唇が、何か言いたそうにしている。
なんだか不貞腐れているみたいで可愛い。
私と目が合うと、ふいっと横を向いてしまうから、愛しすぎて頬にキスをした。
するとようやく、こちらを見てくれる。


「オヤジとも寝たろい」
「だから言い方!いろいろ報告しに行ったんですよ」
「サッチと厨房でふたりきりだったろ?」
「マルコさんに持っていくコーヒーを淹れて貰ってた時ですか?」
「一番は、再会したばかりの頃、エースと二人っきりでいなくなってたなァ」
「ストライカーを直した時のことですね、懐かしい…!」


私にとっては家族との思い出。
マルコさんにとっても家族ではあるんだけど、複雑な思いがある様子で、再びふいっと目線を反らされる。
その様子が可愛くて、小さく笑ってしまった。
するとますます、唇がへの時に曲がるから、可愛くて仕方がないんだ。
もう、何この可愛さ!
隊の皆さんが見たら卒倒しちゃうんじゃないかっていうくらい、珍しい。
こんな風に、妬いたりしてくれるんだ。
あの時、そんな風に想ってくれていたんだ、と改めて実感をえることが出来て、私はもう頬が緩みっぱなしだ。


「でもそれを言うなら、マルコさんは知らない女の人に、言い寄られてました!」
「あれは…不可抗力だい」
「美人だったし…」
「誤解を与えちまったことは、反省してるよい」
「すっごい妬きました」


今度は私が頬を膨らませる番だった。
あの時のことは、もうすでに忘れてしまっていたけれど。
正直、あの事が無ければ、自室でマルコさんの気持ちを聞けることはなかったんだろうなって思うんだよね。
だとしたら、少し感謝したいくらいだった。
だって、いつもいる部屋で、これからも共に過ごす部屋が、思い出の場所っていうのも、すっごく素敵だよね。
特別もいいけど、日常が特別になるのも嬉しい。
膨らませた頬に、マルコさんがキスをしてくれると、もともと演技だったそれはすぐにしぼんでしまう。
間近にあるマルコさんの唇。
私からも簡単に触れられる位置にあるから、何度もお互い求めるように重ねあってしまう。


「家族に妬くなんて自分でも格好悪いと思ってんだ、だが…クルーも全て含めて、お前を他の誰にも触れさせたくねェのが本音だ」
「そんなの、私だっておんなじです」
「あいつらが、おれの女に手を出さねェことぐれェ、きちんと理解してるよい」
「はい、絶対ないです。…そういえば、もうひとつ、妬いたことがあります!」
「まだ、何かあったかい?」
「イルヴァさんと、すっごく仲が良くて妬きましたよ、私」
「………は?」


途端に、マルコさんの表情が一気に曇る。
曇るというか、なんだか悍ましいものでも見たかのように、ぶるっと身震いをしているようだった。
あれ、もしかして、何か地雷だった?
マルコさんの様子に私もオロオロとしてしまい、どうしたらいいのかわからなくなっていると、目の前のマルコさんが首を左右に何度も振っている。
どこか、青ざめたような表情にも見えるから、なんだかすごく意外だった。


「***…それは絶対に違ェ…、何をどう見たのかは知らねェが、満に一つも無ェ」


マルコさんが、思った以上に真剣に、真顔でいうものだから、私も真面目に頷き返した。
互いの間に緊張が走っていたけども、そっと頭を撫でられると、その掌の優しさにほっと安心する。
私の表情が緩んだからなのか、マルコさんの頬も次第に緩んで行ってくれたようだった。
良かった…。
楽しい旅行のはずなのに、このままの空気だったらさびしいもんね。
よくはわからないけど、イルヴァさんに嫉妬するのはやめようと思った。
っていうか、そもそも、一応私とマルコさんの仲は公認のようになってしまっているから。
自分でいうのも、すっごく恥ずかしいんだけど…。
だからこそ、他の人が横やりを入れること自体、有り得ないことだと思う。
皆私のことは、子供の頃から知っているから、馴染みもあるし可愛がってくれるけども。
ある一線をきちんと引いてくれていることは、私自身でもきちんと理解出来ている。
サッチさんなんかは、頭は撫でてくれるけど、並んで座ったとしても絶対に肩が触れないようにしてくれているし。
それは他の皆さんも同じで。
この時点で、家族に妬くなんて言うことは、お互い全く心配無用というわけだ。
ここで会話に混ぜたのは、単にじゃれ合う為であり、少しの言葉遊びのつもりだった。
それはきっと、マルコさんも同じだと思う。
妬いてくれたのは、多分本気なんだろうと思うけど。

目の前のマルコさんが、ますます愛しくなってしまい、首筋に両手を回して抱き着いた。
胸元もしっかり密着させてしがみ付く格好を取ると、マルコさんも背中を抱いてくれる。
この空間が、すごく幸せなんだ。



**********



ラビウという町の宿の門でレイさんとお別れをして、目的である建物に入っていくとそこは…。
ものすごい異空間が広がっていた。
異空間って言っていいのかはわからない。
だけど桜の有名な島らしく、ものすごく和な雰囲気の建物だった。
門から建物の間は、小さな庭園の真ん中に敷石が敷き詰められて、そこを歩いて進む感じになっているし。
建物から出てきて歓迎してくれる方々は皆着物を着ていて、立ち振る舞いが美しい。


「ようこそお越し下さいました。ご予約、承っております。こちらです」


宿の方に荷物を持って頂き、そうするとマルコさんが私の手を繋いでくれる。
案内されたのは、一旦入った建物の奥から更に外に出て、庭園を抜けたその先だった。
歩いていく道すがら、次第に見えてくるそれは、離れのようになっていて背の高い策に囲われている。
建物の中の先の、建物…?
どうやら敷地内にはあるらしいけど、いくつか離れもあるみたいだった。
そのうちのひとつに案内されるまま、女将さんが平屋建てになっているそこの引き戸をカラカラと開いていく。
滑車でもついているのか、滑りも良く難なく開くその仕組みが気になったけど、今は部屋の中の方に興味が向いていた。

玄関がすごく広い。
そこに靴を脱いで上がると、更に引き戸が見えている。
その引き戸を開くと…。
すぐ目の前に、畳の広いリビングが広がって見える。
真正面にはテーブルとイスが並べられていて、右の奥に、背の低いベッドが二つ並んでいた。
女将さんがまだ同じ部屋にいる為、そちらは出来るだけ見ないように心掛けた。
だって見ちゃうと絶対顔が赤くなる。
そこで今夜マルコさんと、と考えるだけでもゾクリと背筋が震えるくらいだ。

広いリビングの向こうは、一面の窓で、その向こうにはテラスが広がっていた。
そちらへ足を向けようとしたものの、マルコさんにぐいっと腕を引かれてその場で足を止める。
…ん?
見に行っちゃ、だめ?


「宿のご説明が必要でしたら、一通りご案内致しますが…」
「大丈夫だよい、おれが一度見に来ているから」
「左様でございましたね、では、お着物のお召し変えは明日でよろしいでしょうか」
「ああ、それも予定通り頼むよい」
「畏まりました、ではお夕飯まで、ごゆっくりおくつろぎください」


そうか…。
私がいちいち、すべてに感動して足を止めていたら、女将さんがいつまでたっても戻れない。
深々と頭を下げて、女将さんが建物の外へと出て行った。
ふたりきりになる。
マルコさんを見上げると、目を細めて私を見下ろしてくれていた。
私は期待した目を向けていたと思う。
テラスの方に足を向けると、繋いだ手をそのままに、マルコさんも一緒に来てくれた。
窓の向こうに広がる、広々としたテラス。
外には、テーブルとイスが二脚置いてあるから、そこでお茶も飲めるようになっているんだろう。
だってその筈だ。
テラスの向こうには、美しい庭が広がっているんだもん。
真っ白な石庭が広がっていて、ところどころ石のオブジェも置いてある。
周りは策に囲われてはいるものの、策付近にはずらっと桜の木が並べて植えてあるから、策の主張が全く気にならない。


「すごい…綺麗な庭ですね」
「気に入ると思ったよい」
「ありがとうございます、マルコさん」


こんな素敵なところで、二泊も。
心の底から、感激した。
思いっきり笑顔を向けていたと思う。
マルコさんも私を見て、表情が緩んでくれている。
ありがとうの意味を込めて、マルコさんに背伸びをしてキスをおねだりした。
私の意思を汲んですぐにマルコさんがキスをしてくれる。
それが気持ちよくて、でもなんだか照れくさくて、触れてすぐに離してしまう。
だってなんか…。
さっきから、マルコさんの色気がすごい。
いや、ずっと荷車の中でもすごかったんだけど…。
ここに来てから、格段に増している気がする。
私を見つめる瞳が熱を帯びていて、思わずベッドをチラリと見てしまって、勝手に一人で照れてしまう。
ダメ…。
いや、いいんだけど。
まだ部屋を全部見ていないし。
抱かれたいと思う度、身体が熱くなっていく気がして、最高潮に照れた。

とにかくその想いを振り切るように、マルコさんの手を引っ張って一緒にテラスに出てみると、暖かい風が身体を包む。
上陸した港よりも、暖かい地域なんだと思う。
テラスの右端、更に道が続いていると思ったら、その先にはなんと露天風呂まで完備されていた。
思わず覗いてしまうと、手前に脱衣所があって、庭のすぐ近くにお風呂がある。
花見風呂が出来そうだと思ってしまった。
実際、風で飛んできた桜の花びらが、水面に浮いている。
風流だ…。


「後で一緒に入るかい」
「一緒に…は、はい…入りましょう、後で…」


多分これで、全部を見終えたと思う。
部屋に戻ろうにも、マルコさんにそれを阻まれてしまう。
いつの間にか繋いだ手を解かれ、後ろから抱きしめられる格好になっていたから。
ひえ…!
今朝だって、ふたりきりで、自室でしていたというのに。
いつまでたっても、こういう色気のある行為に慣れず、盛大に照れてしまう。
このまま、さっき見た端のベッドへ移動するんだろう。
マルコさんにキスをされながら、もしかしたら、抱っこで連れていかれるのかもしれない。
そう思うだけで、速度を上げていく鼓動。


「もうひとつ、見せたいところがあるんだよい」
「…もうひとつ…?」


なんだろう?
部屋の作りから、まだ見てないのは洗面所くらいで。
他に何か部屋みたいなものはあったかな…?
疑問に思って首を傾げていると、さっきの予想が半分だけ当たってしまった。
ぐいっとマルコさんに引かれた身体がふわりと浮く。
横抱きにされて、すっぽりとマルコさんの腕の中に抱きしめられたからだ。


「庭を楽しめるところが他にもあるんだ、…気温も丁度よさそうだ」


抱えられたまま、てっきり室内へ戻るんだとばかり思っていた。
だけどマルコさんの足は、露店風呂を抜けて更にその先へと進んで行く。
露店風呂の壁で隠れていた箇所に、東屋みたいなものが存在していた。
お風呂に併設されているように、そこからも石庭が見えるような位置にある。


「わぁ…すごい、ここでも寛げるんですね」


東屋になっているその小さな建物は、その下にベンチがあるのかと思いきや、全面マットレスになっていた。
端には綺麗なクッションもあり、ブランケットまで完備されている。
マルコさんがそこへ向かうから、背中越しに見えた景色は、部屋からのものとはまた違って見えて、美しかった。
ゆっくりと、東屋のマットレスに身体を下ろされていく。
ふわりとした柔らかな感触が、身体に心地よかった。
背を預けられた為、身を起こして庭を眺めようとするも、すぐにマルコさんが私に覆いかぶさって来た。


「…マルコ、さん…?」
「***…もう、限界だ。我慢できねェ…」


顔のすぐ横、その両方に手を突いて真剣な眼差しで見下ろされると、言葉を失ってしまう。
燃えるように鋭く、色気を増した瞳が私を離さないから、身体がゆっくりと熱くなっていってしまう。
どうしよう…。
恥ずかしい。
けど、抱き合いたい。
でも、ここで?
外、だけど…?


「下見に来たときから、ここでお前を抱きたいという想いが浮かんで、ずっと消えねェんだよい」
「マルコさん、ここ…外…?」
「開放的だろい、声も、我慢する必要はねェ」


確かに自室だと、口を塞ぎたいくらい、ものすごく耐えている時もあるけど。
そうなんだけど…!
恥ずかしくて、返答に戸惑っていると、ぐいっとマルコさんが下半身を私の上に乗せていく。
その中心は、もうかなりの主張を示していて、わざと腰を動かして押し付けられる感覚がある。
そんな風にされたら…。
ぐっぐっと腰を何度も動かすそれは、愛し合っている時のそれを想起させられていく。
恥ずかしいのに…でも、もう私も止められそうにないから。
小さく頷くと、ほっとしたようなマルコさんの吐息が聞こえてきた。
そのまま、広いマットレスの中央までマルコさんに運ばれ、いつも、そうしているように唇を重ね合わせた。
それはさっきまでの、じゃれ合いのキスとはまるで違う。
欲を含んだ、深いキス。
呼吸さえ飲み込まれていくように、何度も啄むように重ねあわされた後に、ゆっくりとマルコさんの舌を受け入れていく。
ちゅく、ちゅく、と舌が動く度に水音が発し、時折聞こえてくる小鳥の囀りと共に、あたりへ響いていた。
それに耳を犯されているような感覚を覚え、腰が震えてしまう。


「んッ…マルコさん…愛して…ッ」
「たっぷり、愛してやるよい」


絡み合う唾液がついた唇をマルコさんが舐めながら返事をしてくれているけど。
そういう意味じゃなかったのに。
キスをしながら器用にも上着を脱がされ、ブラ一枚になっている私。
背中に手を回して、それさえ取り払われようとするその手を、思わず阻んだ。
マルコさんの眉間に皺が寄る。
なんだ、とでも言いたそうに不満な表情をダイレクトに表現してくれるから、それすら愛しくて。


「私だけ、やです…マルコさんも、脱いで…」
「そうだなァ、さっさと邪魔な服は脱いじまおう」


またしても、そういう意味じゃなかったんだけど!
私の上から一旦その身を起こしたマルコさんが、ボタンを外すのさえもどかしい様子で、下からシャツを捲り上げて脱いでしまう。
それをベッド端に放った後に、私の上半身を起こしてブラを外し、そのシャツの上に放った。
濃い色のマルコさんのシャツの上に、淡いレースの私の下着が乗っている様は、性的欲望を喚起するんは十分すぎる程だった。
マルコさんもそれを見たんだろう、ごくりと喉を鳴らしているのが聞こえた。


「先に全部脱がしてェんだが」
「…そんなの確認しないでください…恥ずかしい…」
「***の照れる顔が見てェんだよい」


至極楽しそうにしているから困る。
先にマルコさんが下着一枚になり、靴下を脱いでいた私の手に添えて、足先からそれを抜いてしまう。
スカートまで下ろされて、私も横に紐のついた下着一枚の姿だ。
陽の光を浴びたマルコさんの身体が綺麗。
こんなところで、こんな格好になってしまってもいいの?
それくらい、官能的だった。
鼻血が出ていないかと、心配になるくらいだったし。

マルコさんの腕に背を抱かれ、キスをされたまま、ゆっくりとマットレスに共に身を沈めていった。
キスは深まるばかりで、それはこれからの行為の合図のよう。
身体にかかるのはマルコさんの甘い重みと、私の唇から離れて徐々に下がっていくマルコさんの唇。
それが首筋を通り、水音を立てながら肌を吸い上げられ、やがて胸元に到達する頃。
我慢していた甘い喘ぎが、ついに口から出てしまった。
外でこんなに大きな声を出してしまうのも、自分の甘い声が自然に溶け込んでいくのが耳に届くのも初めてで。
その身が焦がれぬよう、必死にマルコさんにしがみ付いていた。




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