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いざやくん、あなたの完璧主義について、わたしは首肯しかねます。だって生きているだけでしんどそう。
そしてあなた、あなたはすぐ過度で過激な表現を使いますね。ラディカルな思考ではそれらの言葉の一つ一つは正しいのだけど、なんというかとても、心臓に悪いです。
あなたは刺激的な表現をあえてチョイスして、物事や人物を加速度的に動かそうとしますね。あなたにとっては等速だとしても、なんというか、わたしにはとっても疲れます。
あなたはわたしを「大型草食動物のごとくのろまだね」「なんて愚鈍なんだ」と口々に言いますが、あなた、わたしがこのように穏やかでスローリーで心広いおかげでこんなに長いこと、あなたという要注意人物といっしょにすごすことができているわけですよ。それをあなたはわかっているのか。わたし、あなたとのバランスとるためにどんどん『のろま』になってる気がするもん。いかんいかん、なんて思うわけです。

「ってちょっと、人の話聞いてるの?」

ほらまた今日も囃し立てるようなすごい剣幕!
ガーネットの燃える瞳でなにかをご論弁。

「きみは本当に鈍重だよね、おれがいなかったらどうするつもり」

いざやがいなかったら?一人だったら、まあそりゃあ色々大変そうだけど、なんとかやるよ、だってもう少し私は『のろま』じゃなかったと思うし、鋭さや賢さや素早さ、そういうものも、今よりはもう少し、備わっていたと記憶しているから。

「おれはどうにでもなるけどさあ、君はねえ」

ああ、お言葉ですがいざやさん、そっくりそのまま返します。
わたしはむっつりしたまま無言の抵抗、めんどくさいから言葉にはしない。

「なに、不機嫌になったの?ははは」

いざやは笑いながらキッチンへ足を向ける。

「…あれ、この前買ったマルコ・ポールの茶葉はどこ?」

わたしはむっつりを決め込む。

シナモンスティックは?ここにあった黒いUSBは?小道具のウィッグは??ねえってば。
なにを言われてもむっつりを決め込む。さりげなくにらむ。

「……悪かったよ」

よろしい!!!
完璧主義者が聞いてあきれる!自分のもちものの場所もわからず他者を言葉で攻撃するか!痛い目を見なさい!!

しっかり反省したら全部の場所を教えてあげるね。

「…たしかに君は、どこでも幸せにたのしくやってけるよ…いつも」

「いつもいつもしつこいくらいおれに付き合ってくれて、どうも」小さすぎる声が聞こえた気がしたのでわたしはめちゃめちゃに笑ってやってから、全部の場所を教えてあげるのでした。

これからもよろしく、どうも。


(20.05.31)



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