「本当に?」
彼が監察という仕事でも危険なことは承知していたはずだった。だから、こんな日がいつか来るかもしれないと覚悟はしていた。のに、どこかで安心していたらしい
「わりぃ。俺らがあいつのこと・・・」
土方さんは顔をあげずに申し訳なさそうにつぶやく
「俺らの力が足りねぇから、あいつは刺された」
「ひ、土方さんのせいじゃないよ。誰のせいでもないよ」
昨日まで元気にしていた退は集中治療室にいる
「すまない!」
病院の廊下に響き渡る
誰のせいでもないのに、土方さんはわたしに向かって何度も謝る
これが真選組なんだと、これが退が誇りに思う職なんだと思った
「もう、謝らないで。謝ったって、退が今すぐ出てくるわけでもない。わたしだって謝ってほしいわけじゃないんです。だから、退の命を無駄にしないでください。全力で戦ってください。だれも…だれも、死なせないでください」
わたしの言葉はきっと土方さんを傷つけているのだろう。わかっていながら言うわたしは酷い人だ。
土方さん、ごめんなさい。
集中治療室のランプはまだ灯っている。わたしがいまできるのは退のことを思うことと、土方さんを傷つけることしかできない。涙が止めどなく流れる。
「本当にすまなかった」
そう言い残して土方さんはまた戦場に向かっていく
仲間のために、自分のために
わたしはただ集中治療室のランプが消えるのを待つことしかできなくなった。