―僕達は、君は、花のようだ。


「ルーシィ、どうしたの?これ。」

いつものように呼んでもいないのに勝手に出てきた獅子の星霊に、お風呂から上がってきたルーシィは目を丸くして立ち尽くした。特段いつものような「やあルーシィ、今日もかわいいね♪」などなんだのの挨拶もせず、窓辺に飾ってある花に興味をもちその花に顔を近付け香りを楽しむレオ。まったくこの男は…と呆れつつも変わらずに自分の元に魔力を惜しむことなく来てくれるレオに内心顔が緩んでしまう。

「来てたなら言ってよ。」
「だってルーシィお風呂だったから。」

入ったら怒るでしょ?

そう、眉を下げて困ったように笑うレオにルーシィは、そうだけど…とむくれながら髪をタオルでふいた。

「それ、ミラさんがくれたの。ソーサラーの撮影でもらったみたい。綺麗でしょ?」
「ふーん…。綺麗だね。」
「意外。レオが花にそんなに関心持つなんて。」
「え?僕花好きだよ。それにほら僕ってば花似合うし。」

キラキラと爽やかに笑うレオの横で、確かに飾られた花達がより一層輝いて見えた。なんなら花がレオの引き立て役になっているようにも映る。成る程確かに言われてみれば、自分に近しい異性の中では彼が一番花が似合う。

「あ、ルーシィ今僕に見惚れてたでしょ。」
「な、ば、ばかじゃないの///そんなわけないじゃない。」
「あはは、ルーシィほんとに嘘つけないね。」

頬を染めて否定するルーシィだがそんな反応が目の前の男に通用するわけなく、するりと、あっという間に長い腕に捕まった。

「ちょ、ちょっとレオ?///」
「…花の匂いがする…。」

濡れた髪を指に絡め、ルーシィの首筋に口付けるレオ。風呂上がり特有の清潔感ある柔らかな香りに花の香りが入り混じっているルーシィの身体がレオの理性を崩すことはたやすい。

「ボディーシャンプー、変えた、から…///」
「うん、わかるよ。前のも好きだったけどこっちの方がルーシィのイメージに合ってる。」

後ろから囁かれる色気のあるレオの声にルーシィの鼓動が早くなった。些細な自分の変化に敏感に気が付くレオが、いつもたまらなく愛しい。

「んー…このまま食べちゃいたいけど…」
「……?」

すっと、離れた身体にルーシィはきょとんとする。いつものようにそのまま「ルーシィ、そろそろ愛を語る時間じゃない?」などとこれまたベタなお姫様抱っこですぐさまベッドへ連れて行かれるかと思っていたのに。それまで"男"を感じさせていたレオはへにょんと笑い、"星霊"としてのレオに変わっていた。

「髪乾かさないと、風邪ひいちゃうからね。」
「あ…そっか。」
「あ、今残念に思ったでしょ。」
「思ってないわよ!///」
「大丈夫だよ、ルーシィの寝る支度が終わったら愛を語らう時間が待ってるから。」
「あ、あのねぇ…///」

やっぱりいつもの変態レオだ―ため息をつきながらドライヤーをあてに行こうとするルーシィの後ろ姿をにこにこと見つめるレオ。本当に、くるくると表情が変わるルーシィは見ていて飽きないしとても可愛い。もっといろいろな表情を引き出したくなる自分は相当彼女に酔っているのだろう。

「花の命は短いけど…」

人間と同じように多彩な花、ひとつひとつ違う花。色んな顔を持つ花達はどんなに綺麗でもすぐに枯れてしまう。人間とてそれは一緒でいつかは枯れる。それでも―。

「愛情をたっぷり注げばより一層、輝くもんだよね。」

自分の恋人がそんなことを考えているなど知らずに呑気に鼻歌を歌いながら髪を乾かしているルーシィを満足気に見つめるレオ。すると、突然ぴたりとドライヤーが止まりくるっと振り返ったルーシィは窓辺にある花を指差した。

「そんなに気に入ったなら、あれ持って帰る?」
「え?」
「花。」

あまりにもにこにこしていたレオに、余程あの花が気に入ったのだと勘違いするルーシィは真面目な顔でそう言った。レオは少しだけ苦笑いを浮かべた後にニヤリと悪戯な笑みを見せてから、んー、とルーシィのところにてくてくと歩いていく。なあに?と問うルーシィはいつまでも変わらず純粋無垢。

「じゃあ今日は星霊界で愛を語らう?」
「はい?」
「だって持って帰っていいんでしょ?」
「何言ってんのよ、あたしは人間よ?」

そう、軽く笑い飛ばすルーシィの耳元に唇を寄せてそっと囁くレオは再び"男"を匂わせて。

「だって、僕にとっての花は―」

君だからね。

そう言えばほら。
真っ赤になった君の顔は
また新しい顔。

今日もひとつ、君を知る。







【bloom】花



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