「違うよ!!なんかそれ違う!!確かに、あんたにそんなことしたヤツは最低だし、恋人も報われなかったと思うけど!!だからって、あんたが悪魔になっちゃったら…永遠に恋人のところになんか行けないわ!!」
「…!!!!」
「やっぱりあんたはここであたし達が倒す!!じゃないとこのままずっと解放なんかされないんだからね!!」

ルーシィはキッと目を吊り上げて腰の鍵に手を触れた。不謹慎か?俺の想い人はやっぱりイイ女だなって、その時たくましく思ったんだ。

「開け!!!獅子宮の扉!!レオ!!!」

よりによってロキかよ!!!!まあ、こいつに対抗できそうな星霊つったらロキとかアクエリアスぐらいか…。光に包まれて姿を現した獅子の皇子はルーシィと同じように目を吊り上げて俺とリリスを交互に見た。

「ルーシィ、無事で良かった。君を危険にさらしたグレイには後でたっぷり礼をするとして…」

え?!俺?!

「…この悪魔を倒せばいいんだね?」
「ええ!やっちゃって!!」
「…星霊魔導士だったの…。でも、無駄よ。私に攻撃は効かないわ。」
「それはどうかな?」

ロキはそう言ってちらりと俺のほうを見る。

「グレイと一緒だからね。氷魔法と光魔法の連携技だ。それに、君達悪魔は光に弱い。」
「それが何?光に弱いのは事実だけど、それならあの女を先に殺せばいいだけのこと。」
「させるかよ!!」

向かってきた黒い槍を俺は魔法で凍らせる。ロキと一緒に、ルーシィを守る態勢になりリリスに向かって魔法を仕掛けていく。

「王の光よ!我に力を!!」
「アイスゲイザー!!!!」
「きゃああああ!!!」

俺とロキの魔法が重なって、光をまとった氷が地面からリリスに攻撃を加えていく。いくら魔法が効かないリリスでも、さすがに連携されればダメージを受けるようで、大きく悲鳴をあげ、リリスはその場に倒れこんだ。

「……まさか、光を有する星霊を持ってるなんて…」
「リリス…。」
ルーシィは複雑な表情で、リリスを見つめていた。

「…ふふ。悪魔はね、自分では死ねないけど他からの攻撃にはとても弱いの。だから邪悪なクリスタルの力を借りてた…。」

命が尽きるときなのか、彼女の体はどんどんと砂になっていった。ルーシィが泣きそうな顔をしてる。

「……これで、やっとあの人の元に行けるのかしら。」

苦しみから憎しみから全てから解放されて呪いは解けて最愛の彼の元へ。

リリスの体が完全に砂になったとき、この空間にリリスの幸せだった時の記憶や、憎しみに駆られていたときの記憶がふわっと広がった。

「…なんか、かわいそうな悪魔だった…」
「…そうだな…」
「綺麗だったしね。」

そこかよ。

俺達はしばらくリリスの記憶に触れていた。




彼女の、美しく、悲しい記憶に。






どれぐらいそうしていたんだろうか。ジュビアとガジルの声が聞こえ、振り向けば息を切らして走ってくるジュビア。

「グレイ様!!!!!無事でしたか?!」
「ああ。」
「悪魔はどこ行った?」
「もう僕とグレイで還したよ。」

やんわりとロキがそういう。殺したじゃなくて、還したって言い方がこいつらしいと言うべきか。

「じゃあ今回の依頼は終わりですね?!」
「ああ、そうだな。」
「ちっ。オレの出番が無かったじゃねーか。」

俺達は、リリスの洞窟を後にして、ギルドに帰ることにした。




「ところで、グレイ。」
「あ?」
「ルーシィまで一緒に落ちた件についてなんだけどさ。」

あ、なんか嫌な予感…。

「どんなお礼にしようか悩んでてさ♪」

やっぱり!!!

「…い、行こうぜルーシィ!!!」
「え?!ちょ、グレイ!!」

俺はとっさにルーシィの手を取って駆け出した。目を見開いてるルーシィと、後ろから名前を叫ぶロキの声。あいつの言う礼はたぶん半殺しにさせられちまう!!ぜってーごめんだ!!!

「グレイ!!もう!!離してってば!!」
「あ、わり…」

ルーシィにそう言われ、俺はぱっと手を離した。一緒に連れてきちまったけど…そうだ。ルーシィはロキのことが好きなんだった。

「…グレイ?」

黙り込んだ俺を。大きな目が不思議そうに見ている。

ルーシィがロキのことを好きだから?

だからなんだよ。

そんなの知ってても、全然諦めらんねーよ。

「ルーシィ。」
「?どうしたの、グレイ…。」
「………こういうの、言わなきゃつたわんねぇから。」
「?」
「…俺、お前が好きだ。」
「………?!!!え、ええ?!!」

あー…やっぱりびっくりしてる。

そりゃ、そうだよな。

うん、そりゃそうだ。

でも、ルーシィが誰を好きでも、言わないと今のまま何も変わらないんだよな。

「…グ、グレイ…あの…。ど、どうしたのいきなり…。」
「いきなりじゃねーよ、ずっと思ってたことだ。」

軽くそう言うと、ルーシィは顔を真っ赤にして頭にハテナをたくさん浮かべてた。俺はすぅっと息を吸ってから、もう一度ルーシィに告白をする。

「俺、ルーシィが好きだ。お前が誰を好きでも…ロキを好きだとしても、俺の気持ちは変わらない。」
「…グレイ…。」
「つーか、ルーシィがロキのこと好きでも、絶対に俺の方がいいって言わせてみせるし!」

闘争心に溢れてそう言うと、ルーシィがさっきよりも顔を赤くしていく。

…こりゃあ、俺、玉砕かな。

こんだけ顔赤くしてんだもんな。

そんなの、もう決まってる…。

「………あたしも、グレイのこと、好きよ?」

ほらな?


って…


ええええ?!


「………ル、ルーシィ!!今…?!」
「…///。あ、あたしもグレイのこと好き!!」

全然目見てくれないけどルーシィが耳まで真っ赤にしてるからホントなんだなって思った。ていうか、恋愛でルーシィが嘘をつくなんて思えないから。でも、なんでだ?だってロキとあんなに仲いいんだぞ?どこからどう見たって恋人にしか…

「ルーシィ…それ、マジ?」
「…マジ。」
「い、いつから?」
「…ずっと前、から。」
「…マジ?」
「マジ。」

嘘だろ。全然気づかなかった。

「…だからね、グレイと話してるとドキドキがとまらなくて…死んじゃいそうになるの。あたし、こんなの初めてで…どうしたらいいかわかんなかった。」

な…なんつー可愛いこと言うんだこいつ…。

「ルーシィ!!!」
「え、きゃぁ!!!」

俺は思わずルーシィを抱き締めた。だって、可愛すぎるだろ?んなこと言われてぐっとこねーヤツ居るなら見てみたい。

「ルーシィ…俺、マジで好きだ。」

…ん…あたしもマジでグレイが好きだよ。」

ルーシィが照れ笑いする。俺もつられて照れ笑い。隣に腰を下ろしたルーシィにポツリと呟く。

「諦めようとも思ったんだ。」

ルーシィの隣に居るヤツのことは俺だって好きだから。

「でもやっぱり諦められる訳なくて、ロキがお前に触れるの見るたびに、すっげー胸が苦しくなって…つーか、てっきり付き合ってんだと思ってたし。」
「……ふふ。」
「?」
「諦めないでくれてありがとう。」
「………/////」

ほらな?

俺はいっつも、ルーシィに心を掴まれっぱなしなんだ。

(……これからが大変そうだけど。)

心の中で溜息をつく。

―彼女を守る皇子のことを考えると頭が痛くなる俺でした―








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