「あー、エース隊長だ!」
「嘘!どこどこ?」
「きゃ〜///かっこいい〜///」

火拳のエースと呼ばれる二番隊隊長に黄色い声を上げる新人のナース達を、呆れたような表情をしながら見ているのは一番隊副隊長であり、水の能力者である****。その後ろからすっと、彼女の同期であり親友でもあるナーガが出てきて手をたたいた。

「こらっいつまでもさぼってないで!覚えることはたくさんあるのよ!」
「はーい。」
「いいなあ、****さんは。エース隊長と幼なじみなんですよね?」
「はあ…まあ…」
「羨ましい〜!!」
「あたしだったら幼なじみなら身体だけの関係でもいいから近くに居たいな〜。」

口々に彼女を羨み残念がる声が飛び、引きつった笑みを浮かべる****に更にナース達は詰め寄る。

『で、実際エース隊長とはどこまでいってるんですかぁ?!』

.
.

「疲れた!!!」

ドサッと医務室のベッドに倒れこみ魂の脱け殻のような表情で窓の外を見つめる****に、「ごめんなさいね、ウチのが。」と苦笑いを浮かべてナーガが声を掛けた。「いや、いーんだけどね。」と、身体を仰向けにして今度は天井を見る。自分より三つ年下の彼女達が恋愛に興味津々なのは至極当然。ましてや身近にいる、好青年のエースに憧れや恋愛の感情を抱き終始そういった話で盛り上がってしまうのもわからなくはない。

「エースっていうのがなんか変な感じ。」
「そうよね、あんなに騒がれてたら気が気じゃないわよね。」
「え?」
「年下の可愛らしいナース達にエースが獲られちゃうんじゃないかってね?」
「…っ///そ、そんなわけないじゃない!」

ナーガに図星をつかれるが、****は顔を真っ赤にして否定をした。そうは言っても付き合いが長い為、ナーガは****がエースのことを好きなことを知っている。2人が約束を交わしていることも。だから尚のことじれったかった。

「少しは素直になってみたら?」
「無理よ…今更。」
「今だからじゃない。いつまでもうかうかしてたら、本当に誰かにもらわれちゃうわよ?」

頬杖を付きながら****の方を見るナーガは、優しくそう諭した。うーん、と唸る****は起き上がり、胡坐をかいて枕を抱きしめている。

「あなたがエースを追ってここに来てからもう3年以上経つのよ。なのに全然変わらないんだから驚いちゃうわ。」
「…もう、そんなになるんだ…」

****は目を細めて懐かしそうに笑った。




「おいっまだ勝負はついてねーだろ!!」
「まだやるの〜…?」
「ったり前だろ!早く構えろよ!!!」

エースがぜえぜえ言いながら拳を打つと、****に向かって炎の波が押し寄せて来た。呆れ顔で溜息をついてから、****はすっと手を翳す。大きな水の塊が炎を包み込むとあっと言う間にそれを消してしまった。

「何度やっても無駄なのに…」

そう呟き、****の髪がふわっと風に揺れた。その様を見てがくっと膝をつき、エースはぱったりその場に倒れこむ。

「ちくしょーっ…また負けた…!」
「あんた…馬鹿?火と水で決着がつくわけないじゃない?」
「っるせえな!つくったらつくんだよ!!」

身体は動かないくせにまだ挑んできそうなエースに向かって、****は手を差し出した。

「今日はもうお終いにしなさいよ、別にあたしは逃げたりしないんだから。」
「…。」

エースがむくれた顔で****の手を取ろうと…した瞬間に、グーで思いっきり殴られ、木の板にめこっと顔を埋めた。周りで見ていた他のクルー達はぎょっとして騒めきだす。

「いてーな!何すんだ****!!!」
「あんた、やっぱり馬鹿じゃない?!火と水の能力者が何の気なしに触れ合ったら相殺効果で怪我するに決まってんでしょ!!!」
「………忘れてた。」

エースは思い出したような顔で頭をかくと立ち上がってハットをかぶりなおし、膝についている灰をぱんっとほろう。

「そんなんだから、あたしに実力抜かされるのよ。馬鹿エース。」
「言ってろ、俺はまだ実を食ったばっかなんだ。お前ぐらいの年数があればとっくに負かしてるぜ。」
次は絶対負かす―そう言いながら船内へ入って行くエースの背を見送る****はあまり晴れやかな顔はしていなかった。

(なんで素直になれないかな…。)

別にエースを負かしたいわけでも、強くなりたいわけでもない。ただエースの傍に居たいから。

****が白髭に入ったのは別にここに憧れていたわけではなく、ただエースと一緒に居たいが故だった。エースが海に出た日から必死で、強くなろうと努力をし、悪魔の実を食べた。やっとまた大好きな彼に逢えたのに、****はいつの間にかエースを追い越していたのだ。

「はあ……。」
「よぉ、****。またエースの相手してたんだってない?」
「…マルコ…」

一番隊の副隊長であるマルコが****に声を掛けてきた。****は苦笑いを浮かべて手を挙げてみせる。

「ほんと、馬鹿よエースは。」
「はは、あいつも焦ってるんだよい。」
「何を焦ることがあるの?エースより後に入ったあたしに追い抜かれたから?」
「まあ、それもあるだろうけどよい…。」

一番隊副隊長はやれやれ、と溜息をつく。****が白髭に入る前から、エースに故郷の話を聞いていた時必ず出てきた幼なじみの名前。彼がどれ程の覚悟で幼なじみと共に過ごすことではなく、海に出ることを決めたのかをよく知っているマルコ。エースにとって大事な大事な幼なじみが突然海賊になると言って白髭に入ってきて、更には当の彼よりも実力が上となれば気持ちが焦ってしまうのもわかる。ただしそんなことは毛頭いえず、マルコはキョロキョロと周りを見渡してから****の耳元でぼそっと囁いた。










遠くなった君



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