「ねぇねぇ、エース?」
「あぁ?」
「私、好きな人いるの。」

****がにっこり笑ってそう言うもんだから、俺は思わず椅子からずり落ちた。




****は、半年前に船に乗ってきた戦闘員で、今では副隊長とは別に俺の補佐的な位置。
気は強いけど、気丈で気が利くし、美人だった。船の中ではナース達よりも人気があって、****に本気で惚れているヤツも中には居る。


俺も、その中の例外じゃない。


だから、まさか想いを寄せる****から恋の相談を受けるようになるなんて思わなかった。
いや、正確に言うと、【受けたくなかった】。

「聞いてる?エース。」
「…聞いてる。」
「ずっと好きだったんだけどね。」
「……。」

さっきから聞いてれば、想い人の話ばかり。私の好きな人は礼儀正しいだの、冷静だけど実はアツイだの、すごく強いだの、声がいいだの、仲間思いだの…。

何が悲しくて、好きな女からの恋愛相談なんか受けなくちゃいけねーんだよ。
これほどの貧乏くじがあるか?

「あー…とりあえず告白でもしとけよ。」

俺は面倒になってきたから適当に返事をした。もう、随分一緒に居るから適当に応えたのがわかったらしい。じろっと睨みつけられ、「まじめに応えて」と怒られた。

「俺はいつだって真面目だぞ。そんなに好きならさっさと告白してくりゃいいじゃねえか。」
「…何怒ってるのよ。」
「怒ってねぇよ!」

あーくそ!!
こんなこと言いたいわけじゃねぇのに…
なんで好きな女の恋ひとつ、応援してやれねーんだよ、情けない。

でも、そいつは俺よりもお前のことを大事にしてくれるのか?想ってくれんのか?
世界中のどこ探したって、俺以上にお前のことを好きなやつなんて絶対に居ない。

なぁ、****。
好きなやつって誰なんだよ。

俺が思い当たるのは一人しか居なかった。

「…ほら、早くいってこいよ。」
「え?」
「今の時間なら、一人で部屋に居るはずだぜ。早くいってこい。」

****の背をぐっと押すと、彼女はそれに抵抗する。

「ちょ、ちょっとエース!いうってどこに何を?」
「だから…言わせんなよな。マルコだろ?お前の好きなやつ…」
「…は?!」
「…え?」

反応がなんかおかしいな。
俺、変なこと言ったのか?

「…誰が、マルコって言ったのよ。」
「え、だって…」

今までの話の流れからして、あいつしか居ないだろ。
他に誰が…

「…はー…あなたって、意外と女心に疎いのね。」
「……え?」

俺が目を丸くして必死で思考を巡らせていると、ぐっと背伸びをした****に、キスをされる。

一瞬重ねられた唇に、とんでもなく動揺しちまった。ふと目の前に、頬を染めてむすっとした****の顔。

「私が好きなのはあなたよ、馬鹿エース。」

これだけわかりやすく言ってたのに、なんで気付かないの?
女の子から告白させないでよね。

そんな文句を言いながら、船内に戻っていこうとする****の腕を掴まえる。
俺は内心では緩む頬を隠しながら、にやっと笑い一言呟いた。

「言い逃げは無しだぜ、****?」

―返事はもちろん決まってるけどな。




『つーか、まわりくどいんだよ、お前。』
『まわりくどくないじゃない!もろエースのことだったのに…』
『いーや、マルコのことだった。』
『…自分じゃ自分のことは見えない、ってことね。』
『まぁまぁ…大好きだぜ、****。』
『…///ほんと、馬鹿。』





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