逢いたいなあ…

もう二週間逢ってない。

君に最後に逢ったのは

僕が免罪になったあの日



今頃何をしているんだろう

ロキが星霊界に帰ってから既に二週間が経とうとしていた。金髪の少女がカウンターで寂しそうに何度も溜め息をついているのが伺える。

「はあ…」
「ルーシィ、最近溜め息ばかりね?」

ルーシィの様子をくすくすと笑っているのはミラジェーン。妖精の尻尾の看板娘である。目の前にいる少女が何故溜め息ばかりついているのか理由ももちろんお見通しであったり。

「はぁ〜…。」
「そんなに王子様が恋しいなら呼んだらいいんじゃない?」
「やっやだ!ミラさんてば!べっ別にロキに逢えないから寂しくて溜め息ついてるわけじゃないですからね!」

ミラジェーンがそう意地悪に言うのでルーシィは顔を真っ赤にして慌てて否定する。まだ17歳の少女らしい反応に思わず頬が緩んでしまう。可愛い顔をした、世の中の男達誰しもが目を向けてしまうようなこの美少女をここまで赤面させるとはロキは何て幸せ者だろうとミラジェーンはしみじみと思う。そもそもロキが実は星霊だったと言うだけで驚きだというのに、ルーシィとロキが恋人だと言うのだから一体いつの間にそんなことになったのかと妖精の尻尾の男性のほとんどががっかりしていたのだ。

「…3年ですよ。」

ルーシィが言う。

「ロキは3年間星霊界に帰れなかったんです…会いたかった友達もたくさんいると思うし、3年ぶりの故郷を…幸せに過ごさせてあげたいなあって思って。」

優しげな表情で鍵を見つめながら話すルーシィ。寂しいのくらい我慢できます、と付け加え、席を離れて行った。ミラジェーンは、人間と星霊の恋の行方を微笑ましく思う。しかしロキのためとはいえ、もう少し素直になってもいいような気もしたが。

「健気ねぇ。」

ロキはルーシィがそんなことを思い二週間過ごしていることを知らないのかと思うと、すごくもったいないなぁ…とミラジェーンはにやにやと笑みを浮かべていた。






「…寂しいな…。」

こちらは変わって星霊界。ロキは帰って来て、 3年使い続けた生命力と魔力を回復するためあまり動かずのんびりとしていることが多かった。もちろん、ルーシィが所有している他の星霊達とも話をしたりして親交を深めたりもしていたが。3年ぶりの星霊界は懐かしいし。こちらに戻ってこれたのは本当に嬉しいがロキはルーシィがどうしているか…そればかり気になっていた。

「…また自分の魔力を使って門を開けば逢いに行けるけど…。」

ふとそんな考えが脳裏をよぎる。3年前にアリエスと無理矢理入れ替わり所有者であるカレンと対峙した時も自分の魔力を使い人間界に現れたロキは、魔力を使い無理矢理人間界に行くことに特に抵抗は無かった。しかし免罪になったばかりでそのようなことをしては、今度こそ星霊界を永久追放されてしまうような気もするし、何よりも帰る機会をくれたルーシィに申し訳ないような気もした。ロキは退屈な気持ちと、ルーシィ恋しさを紛らわそうと散歩に出かけることにした。

「レオ!!!!!!!」

かつての旧友の姿がありありと蘇る、懐かしい声にロキは体を硬直させた。ドアを開けると同時に何かに抱きつかれそのまま床に転がるロキと何か。ロキはいてて…と身を起こすと、心底驚いた顔で自分に抱きついている人物を見る。


「…アリエス!」






「ねーぇ?ロキって、ルーシィの前の契約者の時はアリエスとかいう星霊と一緒だったんでしょー?ルーちゃん気になんないの?」

あまりやる気のする仕事も無いので、ルーシィはレビィと二人で庭で楽しくおしゃべりをしていると、ふいにレビィが疑問を投げ掛けてきた。この二人は歳も同じだし好きな物も似通っている為仲が良い。脈絡も無く突然そんなことを振られた為にルーシィは何の話かわからずに一瞬固まった。少し考えてから、ロキと自分の話なのかと思い、あぁーと笑顔になる。

「どうして?」

確かにカレンと契約をしていた時はアリエスと二人だったが、それの何を気にすることがあるのだろうと不思議に思う。星霊同士なのだし、二人でカレンと対峙してきたのだから仲が良くて何も悪いことはない。

「だってあのロキでしょー?しかもアリエスは可愛いって話だし…もしかしたらもしかして―なんてこともあるんじゃない!?」

わくわくした表情で妄想をしているレビィだが、当の本人のルーシィはいまいちよく意味がわかっていないようできょとんとしたままだった。「もしかしたら?」と、逆にレビィに聞き返してくる。

「そうだなぁ、ロキだからな。もしかしたらアリエスに手はつけてたかもしんねえな。」

レビィの後ろからひょいっと顔を出したのは相変わらず上半身を丸出しにした、氷の造形魔法を得意とするグレイだった。

「グレイっあんたどこから出てきて…っていうか!!服!!!もー!!!何でそうすぐ脱ぐのかしら?!」

まだグレイの癖に慣れないルーシィは少し赤面しながらグレイに怒って見せる。グレイはそんなルーシィを見てにやりと笑い、どかっと地べたに胡坐をかいた。

「お前、こんなんで赤くなってたらロキと付き合ってんのにこの先大丈夫なのか?心配だぜ俺は。」
「うーん、確かに…」
「な、何が大変なのよ!!それより早く服着てよ!!!」

男経験が全く無いルーシィにはその手の話は通用せず、グレイとレビィはがくっと肩を落とした。これではロキの方がルーシィのペースに合わせるのが大変だなとグレイはかつての妖精の尻尾の仲間であるロキをとても哀れに想う。レビィとしても、ルーシィのそんな純粋なところも好きではあったがロキの先の苦労を思うと涙さえ出てきそうにもなる。

「まぁ、いーや。それよりもロキだ。アリエスって星霊とだよ。ホントにわかんないわけ?」
「だから、何を心配するようなことがあるって?」
「実は昔、今のお前とロキみたいな関係だったかもしれないってことだよ。」

グレイが痺れを切らしてそう言い放つと、さすがのルーシィも理解をしたらしく、少し困惑した面持ちを見せる。その反応を見てにやりとするグレイとレビィは更に不安を煽るような発言をたたみかけていく。

「もしかしたら今頃アリエスと逢って再燃してる最中かもしんねーぜぇ?いいのか?2週間もほったらかしてて。そりゃ浮気されても文句いえねーぞ。」
「確かにねぇ…ロキだし…なんか話を聞く限り唯の仲間って訳じゃなさそうな気もするわ。」
「…。」

徐々に不安気な表情になっていくルーシィを見て二人は顔を見合わせて笑い合う。実際ここまで言うつもりはなかったレビィだが、ルーシィにとってこれはいい薬になりそうな気がし、グレイの意見に便乗することにした。いつまでも遠慮しているルーシィにとってこれがロキに逢う口実になればと思ったのだ。もちろん仕事に行けば星霊を呼ばずして闘えないルーシィだったが、今仕事に行ってもロキは呼ばないであろうとも思っていた。

「ま、俺には関係のねー話だけどさ。相手はロキなんだから少し心配したり疑ったりした方がいいんじゃねぇか?女の子大好きなんだからさ。」

グレイはとどめの一言を言い放つとにやにやと笑いながらその場を去っていく。ルーシィは一気に顔を青ざめさせ、どんよりとしていた。





おかえりなさい、と言う君に



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