私が想いを寄せる綺麗な金色の髪をしたコックさんは、その手も綺麗で、立ち振る舞いも優雅で、非のうちどころのない人だ。

欠点といえば………女の子に見境がないところ。

それ以外は完璧なのだ。

最初は、正直苦手だった。女の子をお姫様扱いする彼の勝手に、どう反応したらいいかわからなくて話すのも億劫で、なんだか愛想笑いばかりしていた気がする。もともと私はお嬢様だもの。お姫様扱いされるのには慣れていたはずなのに、彼の目が見られなかった。ナミに相談していたくらい、苦手だった。

だけどそれは、ある事件をきっかけにいつしか恋心に変わっていた。今までお金欲しさに寄ってきていた男となんとなくの付き合いしかしていなかったんだから、恋なんてしたことがない。だけど、この気持ちが好きってことなんだと、ナミに教えてもらった。

「ご託宣はいいんだけど、まだ告白してなかったの?」
「………。」

ナミのため息がグサリと刺さる。
そう。三日前くらいに、ナミとロビンが協力してくれ、半日だけ、サンジと街を歩くことができたのだ。だけどわたしとしたことが…そのチャンスを棒にふり、なにもできなかったのでした。

「もう片思いしてどれくらいになるのかしら?」
「んと…自覚してからは一年くらいで…自覚する前からなら二年近くかなあ。」
「そんな長い間、よく片思いでいられるわねぇ、まったく…。見てて焦れったいわよ。」
「そ、それはまあ…でもっ振られたら気まずいし…」
「気まずいし?」
「…サンジは、なんかこう…なんてゆうか…海賊だし、仲間だし、恋愛とか持ち込まなさそうな…。てゆうか、サンジにとっては女の子は皆同じなの。だからべつに…「んナミすわぁぁぁん!ロビンちゅわああああん!!ティータイムだぜえええ!!!」

う。

なんてタイミングのいい。
時々、サンジの耳が実はわたしのすぐそばにあるんじゃないかって思うくらい、ジャストタイミングにこうしてお茶とお菓子を持ってくる。時々だけれど。

ナミとロビンにいつものようにセットを置けば、最後はわたし。
跪いて手を胸元で添え、軽くお辞儀をするのが最早定番になっている。

「美しき我がお嬢様…ティータイムでございます。」
「もお、やめてって言ってるのにそれっ。サンジは執事じゃないじゃないっ。」
「****ちゃんの為なら執事にだってなりたいのさ俺は♪」

さらりとそんな言葉を吐くものだから、まともにサンジの顔がみられない。だって、わたし絶対今顔赤いよ…

「本日はアールグレイと、パンプキンプリンになります。ごゆるりと。」

お辞儀をして、少しだけ上目遣いのサンジと目をあわせてしまった。その綺麗な瞳に、心臓が止まる。体が熱い。震えてしまう。どうしよう、どうしたらいいんだろう。サンジが船内へ戻るのを見届けて、私は今まで止まっていた息を恐る恐るに吐き出した。

………なんだか、心臓が早すぎてうるさくて…自分のものじゃないような……………


「相変わらず…わかりやすいのに、なんで気づかないのかしらこの子…。」
「ふふふ…でも、サンジも悪いわね、いつまでも動かないのだから……………****!」

ロビンが叫んだのが、遠くで聞こえた気がしたけど、私の瞼の裏には金髪の綺麗な顔をした男の人が微笑んでいた。






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