「ルーシィ。」 「…。」 「ねえ、ルーシィ。」 「…。」 「…ルーシィってば!」
Sa dpression〜Lusy
「お前何したわけ?」 「ルーシィ、いつもと違う怒り方で怖いよ。」 「どうせ違う女でもひっかけたんだろ。」 「貴様、ルーシィの心をもてあそんだのか?!」
妖精の尻尾。
ナツ、ハッピー、グレイ、エルザに次々にたたみかけられロキは苦笑いをしながらミラジェーンとレビィと話をしている可愛らしい金髪の少女を見つめた。朝から彼女は機嫌が悪い。それはもう取りつくしまもないほど、というか存在ごと虫いや無視。大きな溜息がロキの口から漏れる。
「本当に何もしてないと思う…。昨日の夜までは普通で朝起きたらもう怒ってた。」 「あー、朝ね、てことはお前そりゃ決まりだぜ。なんか変なことしたんじゃねえの?ルーシィがいやがるような何か…」 「うむ、それしか考えられんな。」 「ルーシィがいやがる…」
グレイとエルザにそう言われ、昨夜のことを思い出す。そういえば昨日身体を重ねたときはいつも以上に焦らして虐めたっけ、と知らず知らずに口にしていたらしく、グレイはふかしていた煙草をぽろりと落とし、エルザは飲んでいたジュースを吹き出した。ナツとハッピーはわくわくした顔で、どんなんだよとききたそうに身を乗り出してきたので、ロキはんー、と昨夜のことを反芻する。
『…やっ…だめ、ロキ…』 『…だめじゃないだろ?だってここ、すごい濡れてる…下着がビショビショだ。イヤらしいな…ルーシィは…』 『やあっ…ロキ…!』
「で?!」
ものすごい形相で(興奮していると言ったほうが正しい)獅子の星霊に詰め寄る三人にロキは迫力負けしつつ困ったように笑った。
「あれは…ルーシィはいやがってたわけじゃないし…てゆうか喜んでるんだよ。」 「ほっ他に何か変なことをしたのではないか?!」
顔をたこより真っ赤にしながらも気になるようでエルザがずいっと前に出る。
「他に…?」
『やああっ…も…駄目ぇ…ロキッ……あたしイっちゃ…あああああっ……』
ルーシィがロキの手をぎゅっと握り達しそうになった瞬間、ロキはそれまでルーシィを責め立てていた指を引き抜いた。絶頂の瞬間に指を抜かれたことにせつなげな視線が向けられた。
『ロキ…っ?』 『…どうしたのルーシィ。』 『どうって…あっあん…っやっ…ロキ…!』
再び激しく肉壁をすりあげられルーシィは媚声を漏らす。そしてまた絶頂をむかえる瞬間に指を引き抜かれてしまい、ルーシィは涙を浮かべながらいやいやと首を振った。
「ルーシィの理性が壊れるまでやったんだ♪いやあ……可愛いかったなあ…やば…僕、思い出して鼻血出そう…」 「鼻血ー!」
ロキは赤面しながら手で口元をおさえているし他の三人はロキの回想に鼻血を吹いていた。ハッピーは驚きティッシュを取りに飛んでいき、なんだかもう周りから見たら勝手にやってくれと言いたくなるほど馬鹿らしい。
「あらあら楽しそう♪ねえルーシィ、ロキ結構こっちに来てるのね。」
カウンターから四人と一匹の様子を眺めていたミラジェーンはむすってしたルーシィに、くすくす笑いながら尋ねる。
「…はい。基本的にはあたしが寝てるときとかは知りませんけど、最近は頻繁に勝手に出てきますよ、勝手にね。」 「他のメンバーと仕事行ったりしてるみたいだしね。」 「それほんと意味わかんないんですけど、てゆーか勝手なのよあいつは。犬に見せ掛けて実は猫よ猫。」 「ルーちゃん、獅子は元々猫科…」
レビィとミラジェーンはぷんぷんと怒っている、とゆうよりは拗ねていると表現したほうが正しいルーシィがやっぱり今日は何が不満なのか虫の居どころがよろしくないのだな、と苦笑いする。
「なんで喧嘩したの?」 「け、喧嘩はしてないわよ、あたしが、その、一方的に。」 「でも何か原因があったんでしょ、んん、レビィちゃんに話してごらん?」
にこっと笑ってルーシィの肩に手を重ねるレビィにありがとう、と返し、溜息をついてわかってるんだけどねこれくらいでって、と自信なさげにルーシィは口を開く。
「あいつ…寝言で、カレン逢いたかったって言ってたの…。」 「ロキが?」 「うん、ほら、やっぱりあいつにとってのカレンは、他の契約者とはまた違うってゆうかなんてゆうか、逢いたかったなんて言ってるの聞いたら、自信なくなってきて、腹も立ってきて。」
わかっている、これがただの嫉妬だと。ロキが自分以外の女を、もっと言えば特殊な絆を持っていた元契約者の名を呼ぶなんて、ルーシィにしてみたらそんなの契約違反だ。それでも、彼の疵を知りながら受け入れたのは自分なのだし仕方ないとは思ったが、やはり腹立つものは腹立つのだ。
「ルーちゃん、ロキがどんな夢を見てたのか、それはロキにしかわからないんだけどさ。でも、ロキにとってのルーちゃんとの絆は、カレン・リリカももっともっと特別で、繊細で、だけど固い絆なんだなって、見てて思うよ。」 「……レビィちゃん…」 「言いたいことがあったら我慢しないでぶつけてみたらいいわよルーシィ。ルーシィの気持ちを知るのも、ロキからしたら嬉しいことよ。」
二人にたしなめられ、ルーシィはああそうだ、そうだよね、と小さく頷く。ありがとう、とお礼を言うと席を立って未だ話をしているロキの元へ向かった。
「…ロキ。」 「ルーシィ!?」
名を呼ばれ、ロキはパアッと顔を輝かせる。機嫌治ったの?と尻尾を振られ満面な笑み。そんな顔をされたら口をキかなかったことに罪悪感が沸き上がり、軽く視線をそらした。
「…なおってないけど、仕事に行くわ。一緒に来て。」 「…あ、待って。」
俺も行くぞルーシィ!とついてこようとするナツに睨みをきかせればすみませんと縮こまる火竜にロキは同情しつつ、スタスタ歩いて行ってしまうルーシィを追い掛け、慌ててギルドを飛び出した。
「ルーシィ!待ってってば!」
あまりにも早い足取りにロキは少し走り、彼女の腕を掴むがこちらへ振り向いてくれる気配はない。彼女の頑なな態度にお手上げと言わんばかりにロキは両手を上げた。
「ねえ、そろそろなんで怒ってるか教えて。僕ちっともわからないんだ。昨日のエッチに怒ってる?」 「ち、違うわよ!…あれは怒るとこじゃないじゃない///」
顔を真っ赤にさせて振り向くルーシィは、今日初めて見た怒った顔以外の照れたような表情。「じゃあ何で怒ってるの?」と優しい声色で問えば、もじもじとしながら「…寝言…」と小さな声がかえってきた。
「ん?寝言?」 「そうよ、あんた、寝言言ってたのよ。カレン逢いたかったって…」
ああ、そうかそうゆうことかとロキはようやくルーシィが怒っていた原因に気が付いた。昨夜カレンの夢をみた。カレンにずっと言いたかった、謝りたかった言葉を言えた夢。それが寝言となりルーシィが聞いてしまっただけ、ただそれだけだがルーシィにとっては流せなかったらしい、それもそうだろう。
「…不安にさせた?」
ルーシィの柔らかい髪を掬いあげると、かあっと白い肌が赤く染まる。ロキは細い身体を抱き寄せるとごめんね、と謝った。抱き締められたロキの身体から温かい温度が伝わり、そうだこんな風に安心させてほしかったんだと、ルーシィは首をふる。
「…あたしの方がごめんね。勝手に怒ったりして…。」 「いいんだよ。夢とはいえ、他の人の名前呼んだ僕が悪いから。まあ、怒ったルーシィも可愛かったし、妬いてくれたってことはそれだけ僕のこと好きでいてくれてるってことだしね。」
嬉しそうにそう言いルーシィの唇に自分の唇を重ねると、甘い、と額をくっつける。
「…もお、馬鹿。」
恥ずかしそうに笑うルーシィが愛しくて、ロキは再びぎゅっと抱き締めた。やばいかも、うん、ダメそうかも、だってルーシィ可愛いから。
「…ルーシィ、僕我慢できない…」 「へ?」 「一回かえろ?」 「ちょっ…ロキ?!」
仲直りも束の間、ロキに抱きかかえられて家に戻ったルーシィは、その後ロキに愛され過ぎて足腰が立たなくなり結局仕事にはいけなかったらしい。ルーシィの部屋で大きな声で説教が始まるのは今から数時間後。
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