「レギュ、大好き愛してる結婚してください!」
「気持ち悪いです今すぐ死んでください。」




「ていうことらしいんだけどね、あんまりだと思いませんかシリウス君。」
「んー…」
「あのね、別にわかってるんだよ、レギュにシリウスみたいに女の子に甘い言葉をささやくなんて求めたりしないよ、だって、たまに甘いもん。ふふふ〜。あ、ちがうちがう。そう、求めたりしないけどさ、ひどくないですか私婚約者なのに。」
「あー、まあそうだな。」

午後の授業がない金曜日。穏やかな時間ではあったがレポートがたまっていたシリウスは仕方なく図書室で一人黙々と文献を調べながら筆を進めていた。はやく終わらせて友人達と騒ぎたい。しかしその想いは、なぜここにいるのがわかったのかは知らないが突然に訪れた邪魔者に崩されることとなってしまったのだ。

(誰だ!!誰が俺の居場所をなまえに教えたんだ!!)

図書室だというのに隣で普通に話しかけてくる、THE KYななまえに適当に返事をしていると、それが気に入らなかったらしく耳を引っ張られた。

「聞いてる??!!!!!」
「わー!ばか、うるせえ図書室だぞ!」
「シリウスしか聞いてくれる人いないのになんでそんな反応なのよぅ!ばかばか!シリウスのバカ!」
「落ち着けなまえ!追い出されんだろ!俺はまだレポート終わってないんだ!もう少し…」

ぎゃあぎゃあとまくし立てるシリウスが気付いたときにはもう遅かった。なまえの肩越しに見えたのはにっこり笑いながら青筋立てるマダムの姿。シリウスもにっこり笑い返してみるが効果はなかった。






「……なまえのせいだからな。」
「…。」
「あーあ、俺まだレポート終わってねえのに。」

図書室を追い出された2人は、とぼとぼと(いや、とぼとぼしているのはシリウスだけなのだが)長い廊下を歩いていた。いつまでなまえのお守りをするのか、下手したらレギュラスと結婚をしたとしても喧嘩するたびに自分のところに来るのではないか、と今から心臓が潰されそうに冷や冷やしてしまう。なまえをちらりと振り返ると、特別悪びれている様子もなく、廊下でいちゃついているカップルを羨ましそうにしながら見ていた。

「はあ…まったく。」
「?なあに、なにを怒ってるのシリウス。」
「…怒ってねえよ、呆れてんの。」
「最近シリウスは溜め息ばっかりだよね。そんなんじゃあ幸せ逃げちゃうよ?」

にこにこと笑いながら、背中をぽんぽんと叩いてくるなまえに、シリウスは心の中で(お前のせいだよ)と呟いてみるものの、まあ大変だけどこれが自分の日常なわけで。

「…これはこれで幸せなのか。」
「なぁに?なんか言った?」
「なんでもねぇよ。」

くしゃくしゃとなまえの頭を撫でると、子供扱いしないでよと怒られたがシリウスは穏やかに微笑んだ。


こそばゆい愛情
(シリウスってパパみたい。)
(…………。)