土曜日の午後だった。セブルスと二人、談話室で紅茶を飲みながら読書をしていると、談話室の扉が開いた。誰が帰ってきたのかと顔を上げればにこにことほほえみながら歩いてくるなまえの姿が目に入る。

「レギュ。」
「どこに行ってたんですか?朝から姿が見えませんでしたが。」
「レギュ、エッチしよう?」
「「ぶー!!!!」」

レギュラスとセブルスは同時に飲んでいた紅茶を吹き出した。セブルスは、いち早く厄介事から逃れようと「…後は任せた。」と言い残し「ああ先輩の裏切り者!」と泣き叫ぶレギュラスを置き去りに部屋へと戻って行ってしまったため、レギュラスは必然的になまえと向かいあわなければいけなくなってしまった。

「なんなんです、いきなり…///」
「さっきシリウスのところに行ったらいやらしい本読んでてね、レギュもこうゆうのが好きなのかなって聞いたら、おまえがいるんだからおまえがしてやれ、って。詳しく聞いたら、とにかくエッチすれば喜ぶからって。」
「(兄さん……殺します!!)」
「私、その、初めてだしよくわからないのだけれども…が、がんばるから…その…初めてはレギュって決めてたから…」
「…なまえ…」

いつになく色っぽい、なまえのふっくらした唇が近づいてきた時、レギュラスはなまえの腕をむんずと掴み、足早にグリフィンドールへと向かっていった。

「あの二人がなかなか進展しないのって、なまえのせいだと思うのだけれど。」
「……わかってるならなんとかしてやったらどうだい。」

こっそりと一部始終を見ていたものの、従兄弟の苦労を思うとなんだか涙が出てきそうになるブラック姉妹は、やれやれと溜息をつきながら、再び部屋へ戻って行った。

「兄さん!!!」
「お、レギュ、おまえも食うか?」
「食べません。それよりも、なまえに変なこと吹き込まないでください。」

グリフィンドールの談話室へ入ると、呑気にお菓子を広げているシリウス達の前にずかずかと歩いていきレギュラスは真っ赤になりながら静かに忠告する。

「変なって…ただなまえの質問に答えただけだぜ。」
「なまえの性格はわかっているでしょう。恥ずかしい想いをするのは僕なんですからやめてください。」

―それだけ言い放つとすぐに出て行ったレギュラスをぽかんとした顔で見つめていると、「とりあえず君が悪いんじゃない?」とジェームズ達に言われた。なんだこの貧乏くじは。―


君が赤面するまであと5秒


「あのー、レギュ??怒ったの?」

長い廊下、ただ手を引いて会話もなく先を歩いているレギュラスが気になり、沈黙を破ったのはなまえだった。ぴたりと足を止めると大きな溜息をつき、振り返ったレギュラスになまえはどきりとした。
なんだか、いつものレギュラスじゃ、ないみたい。

「―…僕は別に、焦ってないからいいんですよ。」
「レギュ…んんっ…」

とん、と壁になまえを押しやって、舌をさしいれ口内を侵すように口づければ、切なげな声が漏れた。うっすら目を開けて見ると、息をしようと必死でもがいている顔を真っ赤にしたなまえがいてなんだかむずがゆくなりかわいそうにもなり唇を名残惜しく離すと、とろんとした目で肩を上下させるなまえになんともいえない色気を感じ、レギュラスはごくりと息を呑む。

「レギュ……」
「…たったこれだけでそんなに顔を赤くするあなたを、抱こうなんて思いません。セックスはもっと、なまえが思うよりすごいんですよ。」
「……。」
「僕はなまえと一緒にいるだけで、うれしいですから。」

だから人前であんまり恥ずかしいこと言わないでくださいね。

ふっと柔らかく笑みをこぼし、再び先を歩くレギュラスに、なまえはこくこくと首を振った。しかし、普段恋人というには難しいほど、甘いムードもなにもない自分たちには今日の出来事はいい刺激になった気もする。とりあえずシリウスに感謝しておこう、となまえは心の中で幼なじみに小さくお礼を言ったのだった。