0401


「四月一日はウソついてもいーんだよ」
 と、ユフィに教えられた。年中行事ならやらねばならない。
 あいにく今日は神羅屋敷で、標的にできるのは一人しかいなかった。非常にレベルが高い気がしたが、ヴィンセントのびっくりした顔は、いつもの翳りがちょっと抜けてて好きだ。
 しかし、どうやったらいいのか。
 驚かすのが目的であって、傷付けるようなことを言うべきではないことくらいアスターも心得ている。かといってあんまり嬉しいことを言ってぬか喜びさせても申し訳ない。ヴィンセントだと余計申し訳なくって、後のフォローが大変だ。そもそも日頃から嘘など言わない彼女が人を騙すのは難しいことで……
 とか、もそもそと朝ご飯のたまごサンドを食べながら考える。
 向かいでお茶だけを口にしているヴィンセントをちらりと窺うと、視線だけで何事かと問われる。口を開くと企みがバレる気がして、小さく首を振るだけで答えた。
 ヴィンセントはそれ以上追求せず、ほんの僅かに目を細めて指先で自分の顔に触れた。合わせていた視線が少しぶれ、アスターは慌てて頬を拭う。またお弁当付けてただろうか。
「嘘だ」
「……!!」
 騙された。




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