↓fall


「あれ?」
 気が付けば辺りは薄暗い。
 覗いた窓の向こう、深い色の空は見る間に黄昏をすぎてゆく。
「日が短くなったな」
 背後からヴィンセントの声。
 連れ合いを振り仰げば、彼女が見ていた空を彼もまた見遣っていた。
 瑠璃色を映す彼の緋色に、アスターは目を細めるだけで笑う。
 別に何と言ったわけでもないのに、視線の流れだけでヴィンセントは彼女の疑問を理解したらしい。
 熾火のような星を先駆けに宵空は星空へと変わってゆく。
 隣に立ったヴィンセントにちょっとくっつき、彼女は暖を取った。
 秋夜は速やかに訪れ、冷たい空気に虫の音が響きはじめていた。




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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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