貪欲に望めば手に入ったというのだろうか。それこそ聞き飽いた御伽噺。


「貴方と私は、決して交わることのない道を行くのですね」
「元々相容れぬ道だろう。貴様は何を勘違いしている」
「そう、ですね、」

寿命が違った。生まれが違った。種族も、性別も、生い立ちも。
望むものも願うものも。もたらすものも奪うものも。
価値観も考え方も。何もかも正反対。
平行線だというのならこの世の何よりも遠く離れた存在。

「下らない。この会話自体が無駄だ」
「そうかもしれません。でも、もしかしたら、私達の道は掠ることだけでも出来るかもしれない。交わることがあるかもしれない」
「貪欲だな、三蔵法師。世界ごと貴様の理想に巻き込むつもりか」
「それくらい、貪欲に望んでもいいでしょう?」

そう言って三蔵法師は、少し困ったような表情で笑った。分かり合えないのは悲しいと言ったその唇は僅かに弧を描いて、柔らかく細めた瞳は笑みを象っていたが、まるで泣いているようだとも思う。
その頬に無意識に伸ばしかけた右手を、僅かに動かして止めた。
何をやっているのだ、と自制する。

「貴方と、交わる道が欲しかったのです。紅孩児」

何も交わらない道。望み。
それでも心のどこかで三蔵法師と同じことを願っていたことには、気付かない振りをした。


ゆめまぼろし、フェアリーテイル。
(まるで子供の夢想だ、)



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