(全く、八戒は余計なことを!)

玉龍が最近おかしなことを口走る。いや、口走るだけならともかく行動に移す。
よりにもよって、心臓に悪いことばかり!

「お師匠様。どうしたの?」
「い、いえ。なんでもありません」

首を傾げて、まるで無邪気な子供のように尋ねてくる玉龍に、つい先ほど「夜這いに行ってもいい?」と聞かれた。混乱と赤くなる顔をなんとか抑えて理由を問えば「八戒が、お師匠様がきっと喜ぶって」と答えられ、今ここに人物を恨めしく思う。
たぶん玉龍は旅で疲れた私を励まそうと、八戒に言われた「喜ぶ」というキーワードだけで出た言葉なのだろうけれど、こちらからしてみれば逆に心臓がもたない。

「お師匠様。やっぱり、元気ない?」
「そうではないのです。大丈夫ですよ、玉龍」

思案に耽っていた私を気遣うように覗き込んでくる玉龍に、心配ないと伝える。

「……待って、確か」
「?」

それでも心配するような視線を向けていた玉龍は、少し考え込むように俯いて、そして何かを思い出したように顔をあげた。
次の瞬間、頬に柔らかい感触。

ちゅ、

「……………………………は、?」

一瞬何が起こったのか、頭が追い付かず間抜けな声だけが零れた。
ぐるぐると混乱したまま無意識に玉龍に視線を合わせれば、珍しい、にこりと笑う優しい表情を浮かべる彼。

「八戒が、これなら絶対大丈夫って、言ってた」
「っ!!!!!!」



ほほにうつったびねつは



(げ、元気になるとか、そういう以前の問題です!)



title by 揺らぎ


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