引き裂いて踏みにじってその存在ごと壊してしまいたかった。呪いのような愛でもって。

「悟空に会いたい?」
「…っ、会わせる気など、ないのでしょう」
「うん、ないけどね」

その魂ごと憎悪した。笑顔も優しさも全部全部憎んで、この身の内に潜む闇が色を濃くするたび心が落ち着く。その瞬間が唯一の安らぎ。きみのその顔が苦痛に歪むのが愉快でたまらない。とてもにくらしい子。

「だって悟空に会わせたら、きみは私のことを映さなくなるだろう?」

その瞳が、ただひたすらに私を睨むその瞳が私以外の誰かを映す。
それは酷い裏切りに思えた。
500年、私はきみだけを見ていたのに。

「だめだよ、玄奘。私だけを、見てなくちゃ」

とてもにくらしい子。
とてもいとしい子。
あと何年きみを閉じ込めればきみは私のものになるのだろう。

正気が潰えた意識だけがどろりと溶けた。






title by 揺らぎ


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