なぜ殺したんだ。と怒声を浴びせられる。じゃあ、殺らないで殺られろって言うのか?それは、あまりにも横暴なのではないか、と言えば、ムッとした表情になり、わかってるんだ…と呟いて何処かへ行ってしまった。
取り残された自分は、かえり血を浴びていて、いくら優等生と言われていても経験が浅い兵助には辛かったのかもしれない。

あれなんだろう、迷っている。殺したくないでも何もしなければ殺されてしまう…でも、と。頭の中で矛盾ばかりが募り、全てを否定したくなる。誰にだってあることなんだ、きっと先生にだって六年生にだって。任務先から一人で忍術学園に帰る。そして、雷蔵に挨拶を交わしてから、兵助の部屋へと向かう。


部屋の中からすすり泣きをしている兵助のところに行き、夕食だと伝えるために肩にそっと触れれば、ビクッと肩を上下に揺らした。

「わたしが怖いなら一定の距離を保つから雷蔵には普段通り接してくれないかい」

「さ、ぶろ…」

兵助は何かを言いたげな表情で見つめてくる。居たたまれなくなった俺は、先に食堂に行ってるからと言い雷蔵の元へ帰った。

「おまえだって、つらいのにな…」

去り際に聞こえた声に聞かないフリをした。





アーティスト詐欺師/0328
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テーマ「人外ファンタジー」
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