(Mon)


私のよく知るこの男は、「温かいのが気持ち悪い」などと言う。私は望み通りのことをしてやったというのに、この男はまだ足りないのだと言う。
くちゃくちゃ、くちゃくちゃと。この静寂を破る音はあまりにも汚らしくて不快だ。ものを食べるときは口を閉じなさいって、習わなかったかクソジジイ。まぁ所詮、その塊はもう私のものではないのだし、別に構うことなんてないか。

頭のおかしいこの男はかつて"父"という名前の人間であったが、この狂った空間がその名前さえをも奪おうとしているのだ。
しばらくすると彼の中にささくれの様に残された正常な心が最後の抵抗を始めた。

それは啜り泣く音になり、既に絶えた私の鼓膜を徒らに揺らした。悲劇を絵に描いたような悲劇だろう。ここにいる2人は。

そしてただの"私"になった私は、もしかするとこの男のことを嫌いではなかったのかもしれないとそう思って、なんだかとても可笑しくなって、笑った。



ああ、気のせい?



さあ?