空から降ってきたオムライスに私は心を踊らせた。ふわふわ卵のとろけるオムライスである。ちなみに命名したのは私。
竹中さんには「ふわふわ…。」と嘲笑された。負けないで推したら見事にメニュー入りした思い出の品である。

「どうしたんですか。オムライスなんて珍しいですね。」

「君がオーダーミスしたお陰でよけいな卵を割ってしまったからだよ。良かったね。」

嫌みたっぷりで私に笑いかけると、竹中さんは私の向かいの席に座った。
ちなみに、お客さんが優柔不断だっただけで、私はあんまり悪くない。
竹中さんの嫌みを無視して、私は手を合わせた。

「いただきます。」

「召し上がれ。」

オムライスを一口スプーンですくい上げて、口に運ぶ。性格がねじ曲がっていてもプロである竹中さんの料理は美味しい。とろけるはずもないオムライスにとろけるなどと私が名付けたのは、食べた人の頬がとろけるという意味もあるのだ。流石に恥ずかしくてそこまで竹中さんには言っていないけれど。
さて、特に会話も無く、もくもくと一つのテーブルに向かい合わせになって取る食事は至っていつもの昼の光景である。
………竹中さんの視線を除いてはの話だが。

「…あの、何か用ですか?」

竹中さんと目を合わせないで、私はオムライスを頬張る。

「体調でも悪いのかい?」

「いきなり何ですか。」

「今日はどこか上の空だし、君らしくもないミスばかりしているからね。」

まあ、言われてみればそうだ。余計に割った卵は別として、なんだか不注意がたたってのミスが今日はいやに多い気がする。
グラスの水をごくごく飲んで、再びオムライスに手をつける。

「具合が悪いなら午後は帰ると良い。」

いつもの竹中さんらしくない言葉に背筋がぞわりとした。
今日に限って気味の悪い優しさじゃないか。何かあるのは竹中さんの方じゃないのか。
水をグラスにつぎながら、私は時計をちらりと見た。なんだかんだと言っている間に昼休みは終わるじゃないか。

「私がいなくてどうやってディナー乗り切る気なんですか。」

「暇な慶次くんにでも頼めば良いさ。」

本人に確認してもいないのに、暇人と決めつけられている慶次さんにもはや同情の念すら感じる。確かに暇そうではあったけど。

「大丈夫ですから、心配しないでください。」

「本当に?」

今日はなんだか竹中さんがおかしい。

「今日の竹中さん変ですよ。」

「変なのは君の方さ。」

「私のどこが、変なんですか。」

なんだか妙に落ち着かない。
胸騒ぎがするのはどうしてだろう。




レストラン・タケナカにようこそ!





「どうして君、僕と目を合わせようとしないの?」


 

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