今までに何度も恋人かと尋ねられたことはあった。その度にそんな馬鹿なと笑っていた。
しかし、竹中さんが一方的に私を好いてると言われるのは初めてのことだが、全身全霊で私は断言しよう。



「無いだろ。」



竹中さんは片想いしてると本人がなんとなく言っていたが定かではない。
あの性悪の竹中さんにピュアな恋心が潜んでいるだなんて吐き気のすることはあんまり考えたくないが、まあ女々しいところが無いことは無いとは思う。
とは言え、私は仕事上の付き合いしか無いわけだから竹中さんの恋愛になんて縁がない…とは言い切れないか。
最近でこそ無いが、昔はたまに女の子からの嫌がらせ紛いのことを受けないことはなかった。酷い時は男もいたなぁ…。
それもこれも竹中さんのあの容姿のせいだろう。
私の竹中さんに対する第一印象も顔が綺麗なコックさんだったな、そういや。



「おはよう!!」

「あ、おはようございます。慶次さん。」

「何だい難しい顔して!恋の悩みなら俺が聞くよ!」



そう言えば、慶次さんと竹中さんは古い仲だとか言ってたな。
まあ、仲は良くないというか竹中さんが一方的に慶次さんを嫌ってる節はあるが、竹中さんのことを誰かに聞くなら慶次さんか豊臣さんが一番だろう。



「竹中さんが片想いしてる人っ誰か知ってます?」

「名ちゃんは知らないの?」

「知らないんなら良いんです。」



どうやら知らないらしい慶次さんは目を丸くした。
まあ考えてみれば、竹中さんが片想いの相手をわざわざ慶次さんに言う訳ない。本人に聞いたところで教えてはくれないだろうし。



「名ちゃんさ、何でいきなりそんなこと聞くんだい?」



慶次さんが珍しく真面目にそう聞いてきたので、昨日の佐助とかすがの誤解を話す。
慶次さんはうん、と一つ頷く。何がうん?



「俺も名ちゃんの友達には賛成かな。」

「賛成って。」

「ほら、半兵衛分かりやすいから。」

「は?」



竹中さんが分かりやすいなんて話私初めて聞きましたけど。
あの豊臣さんですら分かりにくいって言ってたよ。



「分かりやすいって言うか、半兵衛の奴は嘘をつくのはすっげぇ上手いから、なかなか本心は分かりにくいんだけど、無自覚だと驚くぐらい素直なんだよ。」



分かるような分からないような、そもそもあの竹中さんが無自覚な行動をするとはなかなか思えない。まあ、でも思い当たる節はあるな。



「…竹中さんが慶次さん来たら店内を消毒ばっかりしてるのは、そういう無自覚からきてるんですかね?」

「…………かもなぁ。」



少し肩を落とした慶次さんを慰めながら、私はいつもの道を進むのだった。





レストラン・タケナカへようこそ!






「俺…今日は行くの止めとくよ。」

「き、気をつけて帰って下さいね…。」



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