あいつを知っていますか?あいつは酷い男なんですよ。貴女なんかが話しかけたそばから、死ぬより辛い思いをするに違いありません。
あの男を知っていますか?あいつほど非道な男は見たことがありません。女を人だなん思ってなんかいません。貴女なんかすれ違っただけで、殺して欲しいと泣き叫ぶような仕打ちを受けるに違いない。

毎日毎日、呪文のように唱えられた言葉を私は震えながらただ聞いているだけだった。
怖いからやめて欲しいと願っても、返ってくるのはいつでも同じ台詞。



「貴女のためなんですよ。」



この人は私の味方なんだと、子供心に思った。
この人は私を守ってくれているのだと思いたかっただけなのかもしれない。
すっかり男性恐怖症になった。
男の子が視界に入るだけで私は言葉を発することは出来ない。恐怖で足はすくむ。堪えなければ涙が頬を伝うだろう。
震える私を保母さんたちはとても心配した。どうしたのと尋ねられても、私は話すことが出来ないのだ。
そして、保母さんが困り果てた頃にあの人が帰ってくるのだ。少し困ったような、でも嬉しそうな顔をして、私を抱き上げてあやす。
私は不思議と泣き止んで、その腕の中で眠るのが私の日常だった。
今になって振り返れば、なんて嫌な人だったのだろうか。私が小学六年生のときにその人が出て行ってから、一度も会ってはいないけれど、元気でやっているらしく、多額の寄付金をこの孤児院に寄付したと聞いた。
あの子は昔から頭が良くって優秀だったから、私達も鼻が高いわと保母さんたちは私達に笑いかけていた。
私も笑っていた。その人の記憶なんてほとんど無かったから。



「貴女を迎えに来ました、名。」



現れたその人は長い白髪をふわりとなびかせて私に笑いかけた。いつもなら、私は動けないはずの男の人の前なのに、私は心底安堵したのだ。


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うまくいかないこの話(´・ω・`)まとまらないので、とりあえずあげてみます1012
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