今日は晴天だ。お腹が空いた。そりゃあもう勢いよく腹の虫が泣き叫ぶほどに。耐え切れず小走りになりながら購買を目指す。
私の頭にしめるカレーパン、クリームパン、やきそばパン、ウインナーパン、サンドイッチ、マヨネーズエッグパン、メロンパン、メロンパン、メロンパン、メロンパン、メロンパン……今日はおにぎりにしよう。梅がいいな。
ますます早足になる私を引き止めるように肩を叩かれて、振り返った。そこには見たくもない顔がにんまりと笑っていた。



「随分と嫌そうな顔するじゃないか。」

「や、やっだぁ!竹中くんじゃないですかぁ!どうしたんですかぁ〜?」

「その頭の悪そうな話し方を今すぐやめたまえ。立ち上がれなくなるまでズタズタにしてやりたくなる。」



とんだ鬼畜だなコイツ!
ていうか、私先輩なんだけど何なのこのナメられ方!ていうか、なんなの私の腰の低さ!自分で自分を殴りたいわ!



「ああ、そうそう僕の事は半兵衛で良いよ。」

「私のことは先輩で良いよ。竹中くん。」

「そんなことより、名。今日の放課後は暇だね。授業が終わり次第下駄箱で待っててくれたまえ。」



そんなことって!そんなことって!!
いや、それより拒否権の無さ過ぎる私の放課後予定にハゲるかと思いましたよ!



「何それ…。」

「じゃあ、僕は行くね。ああ、あとこれ。」



竹中くんが何か黒い物を私に差し出すので、私はおっかなびっくりしながらそれを受け取った。
我が愛しの梅おにぎりである。



「な、なんで?」

「何となく。またね。名。」



くすりとキラースマイルを浮かべて、竹中くんは去って行った。
この梅おにぎり校内オークションとかにかけたら値段跳ね上がるだろうなぁ…なんてことを考えながら私は教室に戻るのだった。おにぎりは私が美味しく頂きました。



「猛烈に帰りたい。」



呟いた私を嘲笑うかのように同級生たちはそそくさと靴をはきかえ、帰路についていく。
ぶっちゃけ、あんな無理矢理な約束というか一方的な申し出は無視しても良かったのだが、此処で無視するとどうにも執念深い竹中くんは自宅に来て「行こうか」なんて言いながらにこりと笑うに決まっている。
ちなみに知らない間に私の自宅の住所はバレてるし、何故か私のお母さんと仲が良い。メル友らしい。始めは驚きのあまり自分の携帯を逆パカした。
竹中くんは私をとてつもなく気に入ってるらしいと言うのが私の見解ではあるが、最近はもうなんかむしろ嫌われてるんじゃないのかと思う時の方が多い。



「名、待たせたね。」



名前を呼ばれて顔を上げれば、もしかしたらストーカー予備軍かもしれない後輩がにこやかにそこにいた。
ちなみに三年である私の下駄箱と二年の竹中くんの下駄箱は正反対の位置にある。わざわざ校舎を半周してくる竹中くんはあっぱれだ。そりゃ女の子に人気出るわ。ほんと、なんで竹中くんは私に構うんだろう。特筆したものなど何も持たない私を。ああ、だから私は竹中くんと一緒にいるのが嫌なんだ。劣等感がありすぎてネガティブになる。



「何処行くんですか…。」

「お母さんが、ご飯ご馳走してくれるって言うから、それまでの時間潰しに。」



お母さん発言に背筋がぞわりとした。十中八九、私のお母さんだ。なんかもうニュアンスがお義母さんみたいで嫌だ。



「時間潰しって、何する気?」
「名に行きたいところがあるなら付き合うし、無いなら僕はお母さんの手伝いでもするよ。」



究極の二択過ぎて、私涙目なんですけど。
何が悲しくて彼氏でもなんでもない後輩と放課後デートしなきゃならないのか分からない。
家に帰ったら帰ったで、もうほぼ百パーセントでお母さんに手伝い断られたからって私の部屋に入り浸る気だ。
あと、お母さんって言うの止めろ!虫酸が走るわ!



「…分かった、とりあえずお茶を飲みに行こう。そうしよう。」

「そうかい?帰っても良いんだよ?」



そう提案する後輩はただの悪魔である。



「君は私が嫌いなんですか。」

「いいや、どうして、そう思われたのか分からないけれど。」



甘ったるいミルクティーを飲む私とブラックのコーヒーを飲む竹中くん。
私にすればなかなか悲しいものがある。私だってコーヒー牛乳なら飲めるんだ!



「じゃあ、どうして私に構うの?」

「嫌かい?」



イエスかノーかと聞かれればかなりイエス寄りなのだが、流石にそんなことをはっきりきっぱり言うのは気が引ける。



「嫌、とは言わないけど…。」



はっきり言えないのは、まあ傷付けるほど私は竹中くんが嫌いな訳じゃないってことだ。



「ねぇ、君は鈍いの?それともそんなフリをしてるだけ?」

「どういう意味?」

「分からないんだよ。君の心が見えない。」

「うん?よく分からない。」



いきなり真面目な顔をして君の心が見えないだなんて言われても困惑するのは仕方ない。竹中くん以外が言ったらそりゃあもうだだ滑りですよ。



「僕は君が好きだ。」



この喫茶店はいつでも静かなところが気に入っているのだが、この時ばかりはそれが憎たらしくなった。
ああ、店主さん私を見ないで。ウエイトレスさんも私を見ないで。隣のテーブルのおじいさんも新聞見ながら私をちらちら見ないで。



「………つまり、あれですか。わ、私のことがそのあれだから、私に構うと言いたいんですか。」

「そうだよ。他に理由は無い。」

「…もうちょっとこう恥ずかしがってくれないですかね。私だけが羞恥で穴に埋まりたいみたいな。」



混乱して自分が何を言ってるかあんまり分かってない。





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収拾つかなくなっちゃったのでリタイアです\(^o^)/ストレートに告白書くとなかなかアレです私が恥ずかしいIMASARA☆0605
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